第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O7] COVID-19家族ケア

[O7-04] COVID-19重症患者を担当した看護師の困難と対処

○牧野 夏子1、内山 真由美1 (1. 札幌医科大学附属病院 看護部)

キーワード:COVID-19、困難、対処、看護師

【目的】我が国で流行したCOVID-19の影響により通常の診療や看護の提供が困難となり、COVID-19患者を担当する看護師の疲労や離職が知られている。COVID-19流行初期は情報が少なく看護ケアにあたる看護師は困難を抱えながら仕事を全うしていたことが推察されるがその実態は明らかではない。特に、人工呼吸器管理等を必要とするCOVID-19重症患者は入院期間が長期化しその看護ケアも複雑である。本研究ではCOVID-19流行から6か月以内にCOVID-19重症患者を担当した看護師の困難とその対処を明らかにすることを目的とする。
【方法】2020年8月、COVID-19流行から6か月以内に重症患者を担当した看護師を対象に半構成的面接を行った。面接内容は基本的属性、COVID-19流行から6か月以内にCOVID-19重症患者を担当した際の困難と対処で構成した。データ分析はCOVID-19重症患者を担当した際の困難と対処を抽出し意味内容ごとに要約した後、類似性と共通性に沿って集約し、コード、サブカテゴリー、カテゴリーと抽象度を上げ生成した。分析過程は共同研究者間で検討し妥当性を確保した。なお、面接時期はCOVID-19重症患者の担当期間を終え、通常勤務となった後とした。倫理的配慮として研究者が所属する施設の看護部看護研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。対象者に文書で研究趣旨・目的、研究参加の自由意思、研究協力諾否の自由、匿名性と守秘義務の遵守、データの保管・廃棄方法、体験の想起に伴う心理的負担と対応、結果の公表方法等を説明し同意を得た。
【結果】対象者は5名(女性、看護師経験年数14.4±7.9年、集中治療室経験年数8.2±6.1年)であった。対象者の語りからCOVID-19重症患者を担当した看護師の困難は、【明確な治療戦略が確立していない中での看護ケアの難しさ】【閉鎖された環境に伴う看護ケアの滞りと充分なケア介入ができない葛藤】【感染する危険の恐怖を抱えながら実践する看護ケアと感染予防の難しさ】【COVID-19重症患者を担当することでの身体的・精神的負担】【COVID-19に感染している可能性を踏まえた生活様式の変更】【組織の体制・整備・対応に対する不満】【PPEの物資不足への不安と不必要なPPE使用への憤り】の7カテゴリー、対処は【円滑な看護ケア提供のための情報共有と看護師間の協力】【限られた環境での看護ケアの実現性に向けた工夫】【医師との連携による疑問点の払拭】【ICUダイアリ―を通して得た家族ケアの実感】【閉鎖空間における音楽による気分転換】【体験の内省を通して得られた成果の実感・消化】【自らのコーピングの強化】の7カテゴリーが生成された。
【考察】COVID-19の流行から6か月以内に重症患者を担当した看護師は情報が錯綜し未知の感染に恐怖を抱きながら看護ケアに従事していたことが明らかとなった。これは感染流行後6か月以内という情報整理、伝達が確立していない時期の特徴が反映されたと推察される。重症患者の長期に渡るCOVID-19対応は看護師にとって患者の回復を実感できないことや閉鎖空間から生じる身体的・精神的な負担に繋がっていたこと、限られた環境により通常の看護業務を遂行できない難しさがあり、看護師の心身状態の把握と対応、日々の看護業務での困難の集約と早期解決が必要だと考える。また組織が危機管理に成熟していない時期であり、運用の弊害や保証への不満も明らかとなった。一方で困難に対して限られた資源のなかで工夫し患者への看護ケアを行っていたことも明らかとなり、看護師の対処について共有し支援内容を検討する必要性が示唆された。