[SY3-01] [シンポジウム] 看護を活かすICT技術
キーワード:ICT、AI、テレプレゼンス
コロナ禍により医療従事者の負担軽減や、医療供給体制の維持に注目が集まっている。特医師の働き方改革は2035年の達成を目標としており、ICT(Information and Communication Technology)の導入や、他職種へのタスクシフト/シェアが前提となっている。一方で、タスクシフト/シェアの候補となる193業務のうち、77業務が看護師へ移行される見込みであり、単なる看護師への業務委譲ではなく、「ICTを活用し、必要最低限なタスクに細分化・効率化する」タスクハックを段階的に看護業務に導入していくべきだと考える。当院におけるタスクハックの事例や展望を紹介する。
①外来の問診やトリアージは一定以上の経験と技能を有する看護師が行うため、人的な制限から診療フローのボトルネックとなりうる。紙の問診票では、十分な情報が得られないうえに内容が不正確な場合もあり、看護師の負担が大きい。AI問診は患者の症候にあわせて質問が分岐し、鑑別に有用な陽性/陰性所見を把握するとともに、カルテへ転載可能なため、転記ミスや負担の軽減に繋がる。また病歴から推定される疾患をリスト化することで、診断エラーの防止に有効であり、経験の浅い看護師のトリアージのサポートとして期待される。
②感染・被曝などのハイリスク環境での看護は、PPEやプロテクター脱着による時間の損失や身体的負担が加わる。遠隔操作可能なテレプレゼンスロボは、これらの環境でのナースコール対応や遠隔ダブルチェックに利用できる。また院外からのアクセスも可能なため、院外の専門職への遠隔コンサルト(透析装置の不調時の院外CEへの相談)に使用することで、電話よりも効率的に情報伝達が可能であり、かつオンコール負担の軽減にも繋がる。
③Rapid Response System起動後、RRSチームの接触から救命センター到着までの患者情報伝達が課題となっている。PHSによる口頭での情報伝達に代わってiPhoneのFaceTimeを用いた伝達も試みられてきたが、報告のために医療従事者の手が塞がることや、処置と並行するため十分な患者情報が得られない、画像が不安定などの弊害が生じている。カメラとマイクを備えた首掛け型ウェアラブルデバイスは、ハンズフリーで情報伝達が可能であり、AIによる音声文章化が可能である。
本邦が迎える人口減少・超高齢社会において、「高い医療水準」と「国民の健康・安全保持」の両立には、医師だけでなく、看護師の働き方改革が不可欠である。看護を活かすICT技術の確立には、現状維持バイアスを乗り越え、医療者側からのアプローチが不可欠である。本発表がその一つのきっかけになればと期待する。
補足:2019年4月の「働き方改革関連法」により、一般的な職業における「時間外労働」の上限は「月45時間、年360時間」とされたが、医師は2024年までこの対象外となっている。2024年からは医師の連続勤務時間を原則28時間までに制限する一方、「全医療機関での年間時間外労働時間960時間以内の達成」は2035年度末見込みで、その間は病院の実態に応じて960~1860時間/年の「時間外労働」が見込まれている。