10:00 AM - 10:14 AM
[O1-01] ICU患者の口渇感に対するメントールの有効性を検討する探索的無作為化群間比較試験
Keywords:口渇、メントール、ICU
【目的】ICUでのストレス経験は、退院後のQOLに深く関わっていることが近年の研究で明らかになっている。口渇感は、患者が感じる様々なストレスの中でも看護師が想像しているよりも大きなストレスになっているとの報告がある。一方で、標準的な介入方法が確立されていない。メントールは、がん患者への口渇の緩和に有効であるとされているが、ICU患者への効果を検証した先行研究はみられない。そこで、本研究は禁飲食中のICU患者にメントールを使用した含嗽、またはスワブによる清拭で口渇感が軽減するか、水道水と比較することでメントールの有効性を探索的に評価することを目的とした。
【方法】デザインは単施設無作為化比較試験とした。対象は禁飲食の期間が24時間以上経過し、意識レベルが清明でコミュニケーションがとれる成人患者とした。同意取得後、無作為に介入群と対照群に割り付けた。介入方法は、非挿管患者には、0.1%のメントール水で含嗽を連続3回、挿管患者にはスワブで口腔内清拭を連続3回とした。対照群には水道水を使用し、同様の口腔ケアを実施した。口渇強度NRSと口渇苦痛度NRSの2項目で構成された口渇主観的アナログスケールを用いて、口腔ケア前後のスケールの変化量を主要評価項目とした。副次評価項目は、口腔ケア後1時間以内に、追加で患者が希望した口腔ケアの回数とした。また、スケールでは拾えない患者の体験を明らかにするために、患者への聞き取りと看護師から見た患者の様子を収集した。本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】80名から同意を得られ、無作為に介入群40名、対照群40名を割り付けた。そのうち、対照群に割り付けた2名が脱落したため、分析は介入群40名、対象群38名とした。口腔ケア前後のスケールの変化量は、口渇強度NRSで介入群3.2、対照群3.3、口渇苦痛度NRSで介入群3.0、対照群3.2と、両群の比較において2項目とも統計的有意差は認められなかった。口腔ケア直前の口渇強度NRS(0-10)の平均は、介入群で7.0、対照群で7.2、口渇苦痛度NRS平均は介入群で7.0、対照群で6.9と、どれも高値であった。また、口腔ケア後1時間以内の、患者が希望した口腔ケアの回数も統計的有意差は認められなかった。口腔ケア後は両群とも口渇強度NRS、苦痛度NRSのスコアに大幅な改善が認められた( p < .001)。 患者への聞き取り調査では、介入群の患者から「スッキリした」とのコメントが多く聞かれた。また、看護師が観察した患者の様子では、口腔ケア後は表情が穏やかになったと報告したものが多かった。
【考察】禁飲食中のICU患者の口渇感の強度、苦痛度は非常に高く、先行研究と同様にストレスは強かった。今回、メントールを使った口腔ケアの有効性に統計的有意差は認められなかった。しかし、患者からの聞き取りでは、対象群と比較して「スッキリした」と答えた患者が多くみられた。メントールの風味や清涼感が患者の嗜好にあえば、苦痛の緩和に役立つと考えられる。また、メントールの使用に関わらず、口腔ケアを実施後は、口渇強度・苦痛度NRSのスコアが半減しており、口渇感の緩和に短期的な効果が認められた。ICU看護師は、禁飲食中の患者が口渇感により強い苦痛を感じていることを認識し、口腔ケアを積極的に提案することで苦痛緩和につとめる必要があると考えられる。
【結論】ICU患者の口渇感に対するメントールの有効性は確認できなかった。しかし、禁飲食中のICU患者は、口渇の強度・苦痛度が非常に高く、メントール、水道水とも含嗽やスワブによる口腔ケアは口渇の緩和に短期的な効果があることが明らかとなった。
【方法】デザインは単施設無作為化比較試験とした。対象は禁飲食の期間が24時間以上経過し、意識レベルが清明でコミュニケーションがとれる成人患者とした。同意取得後、無作為に介入群と対照群に割り付けた。介入方法は、非挿管患者には、0.1%のメントール水で含嗽を連続3回、挿管患者にはスワブで口腔内清拭を連続3回とした。対照群には水道水を使用し、同様の口腔ケアを実施した。口渇強度NRSと口渇苦痛度NRSの2項目で構成された口渇主観的アナログスケールを用いて、口腔ケア前後のスケールの変化量を主要評価項目とした。副次評価項目は、口腔ケア後1時間以内に、追加で患者が希望した口腔ケアの回数とした。また、スケールでは拾えない患者の体験を明らかにするために、患者への聞き取りと看護師から見た患者の様子を収集した。本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】80名から同意を得られ、無作為に介入群40名、対照群40名を割り付けた。そのうち、対照群に割り付けた2名が脱落したため、分析は介入群40名、対象群38名とした。口腔ケア前後のスケールの変化量は、口渇強度NRSで介入群3.2、対照群3.3、口渇苦痛度NRSで介入群3.0、対照群3.2と、両群の比較において2項目とも統計的有意差は認められなかった。口腔ケア直前の口渇強度NRS(0-10)の平均は、介入群で7.0、対照群で7.2、口渇苦痛度NRS平均は介入群で7.0、対照群で6.9と、どれも高値であった。また、口腔ケア後1時間以内の、患者が希望した口腔ケアの回数も統計的有意差は認められなかった。口腔ケア後は両群とも口渇強度NRS、苦痛度NRSのスコアに大幅な改善が認められた( p < .001)。 患者への聞き取り調査では、介入群の患者から「スッキリした」とのコメントが多く聞かれた。また、看護師が観察した患者の様子では、口腔ケア後は表情が穏やかになったと報告したものが多かった。
【考察】禁飲食中のICU患者の口渇感の強度、苦痛度は非常に高く、先行研究と同様にストレスは強かった。今回、メントールを使った口腔ケアの有効性に統計的有意差は認められなかった。しかし、患者からの聞き取りでは、対象群と比較して「スッキリした」と答えた患者が多くみられた。メントールの風味や清涼感が患者の嗜好にあえば、苦痛の緩和に役立つと考えられる。また、メントールの使用に関わらず、口腔ケアを実施後は、口渇強度・苦痛度NRSのスコアが半減しており、口渇感の緩和に短期的な効果が認められた。ICU看護師は、禁飲食中の患者が口渇感により強い苦痛を感じていることを認識し、口腔ケアを積極的に提案することで苦痛緩和につとめる必要があると考えられる。
【結論】ICU患者の口渇感に対するメントールの有効性は確認できなかった。しかし、禁飲食中のICU患者は、口渇の強度・苦痛度が非常に高く、メントール、水道水とも含嗽やスワブによる口腔ケアは口渇の緩和に短期的な効果があることが明らかとなった。