第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Presentation information

一般演題

[O13] 家族看護2

Sun. Jun 12, 2022 2:20 PM - 3:30 PM 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:姥迫 由記子(山口大学医学部附属病院)

3:08 PM - 3:19 PM

[O13-05] 2年目看護師としてクリティカルケア領域での家族看護を考察する
−新型コロナウイルス感染症患者家族の面会での関わりを通して−

○永友 博明1、長田 孝幸1、森 弘太郎1 (1. 飯塚病院)

Keywords:家族看護

【目的】家族面会は、患者にとって安心感をもたらし、闘病意欲を向上させるなどの目的がある。新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)患者と家族面会の場に担当看護師として携わった。隔離環境下において、担当看護師は今回の家族面会で何もできず無力感を抱いた。この症例を通し、急激な病状変化による家族の心理状態、特殊な状況下にある患者の家族看護を考察する。
【方法】症例報告
【倫理】院内倫理審査の承認を得て、院内倫理委員会規定のもと、個人情報保護の厳守と、患者家族に不利益が生じないように配慮した。
【患者紹介】患者A氏:60歳台、男性 家族構成:妻、娘2人 COVID-19に罹患し、ホテル療養中に呼吸状態悪化し救急搬送、B病院入院後は挿管し呼吸器管理。数日間は筆談で会話可能だったが、急激に全身状態が悪化し、呼名反応も乏しくなった。B病院でのCOVID-19患者への面会は病院自宅間面会ではZOOM、来院可能な家族にはFaceTimeを使用していた。当日の面会も家族来院後のFaceTimeを予定。入院後16病日、娘C(当日、濃厚接触隔離期間終了)も同席での医師より病状説明後、面会実施、入院後17病日死亡。
【結果】家族は突然状態悪化の報告が入り、混乱した状態で来院し、病状説明後すぐに面会が行われた。家族は気持ちの整理がつかず、A氏の顔を見ることが出来なかった。この場面の家族のニードをC N S―F A C Eを使用して測定すると、社会的サポート、情報、情緒的サポートの値が高かった。隔離環境下において、担当看護師は今回の家族面会で何もできず無力感を抱いた。
【考察】クリティカルケア領域では、突然の事態により家族は動揺し気持ちを整理できないことが多くみられる。今回の症例でも、そのまま別れを迎えた家族は、A氏の死をうまく受け入れられなかったと考える。病状に対する情報のニードを持ちながら、一方で不安や恐怖の感情を抱え、他者からのサポートが必要だったと考えられる。面会制限により、医師から病状説明後の家族の感情と現状の受け止め方について情報を取れずにいたこと、その上で反応をみながらケアを提供できなかったことは、家族の予期悲嘆を悪化させることとなった可能性がある。面会中にA氏の反応を知ることが出来れば家族が気持ちを少しでも落ち着かせることができると考え、担当看護師は家族の声に対するA氏の反応の有無を確認していた。しかし実際は、A氏の反応は無く家族に何を伝えれば良いかわからず、不安や恐怖感を助長させたのではないかと考える。これは、担当看護師は救急病棟経験2年目であり、そのほとんどをCOVID-19感染症患者の対応をしてきたため、クリティカルケア領域での知識、経験が不足した状態であったことも要因となると考える。担当看護師を含めチームでケアを考案出来ていれば、面会前に家族へ正しい情報を提供し、家族の感情に共に寄り添えた可能性がある。また、家族は面会においてA氏の顔を見ることができ、悲嘆ケアに繋がった可能性がある。隔離環境という家族間・医療者間に距離が生じる中では、日常以上に確実な情報共有を行い医療者からの働きかけが重要となる。
【結論】
・COVID-19禍での面会制限は、面会の目的がうまく果たせず家族対応の困難さを生じることになった。
・家族の情報は心理状態を知る上でも重要であり、家族とのコミュニケーションが減少する時こそ、医療者間での共有を深めることが必要である。
・COVID-19禍では、その機会が減少することを念頭に、看護師は通常通り室内で待つだけに留まらず、方法を工夫しながら家族とコンタクトを取り、ケアに活かすことが必要である。
・特殊な状況下では、ケア提供に困難が生じることを考慮し、チーム内での連携を高める努力が必要である。