11:40 AM - 12:05 PM
[PD10-01] GCS・JCSやMMT評価のピットフォール
Keywords:GCS、JCS、MMT
生命の危機状態にある患者も来院する救急外来では、生命の危機状態を早期に認知し蘇生処置を開始するため、まずPrimary Survey(ABCDEアプローチ)に沿って診療が開始される。そのため、意識障害患者でなくともD:dysfunction of CNS(中枢神経異常)ではGlasgow Coma Scale(GCS)またはJapan Coma Scale(JCS)は必ず観察が必要となる。外傷診初期診療においてGCS8点以下やGCS2点以上の急速な意識レベルの低下は切迫するDと定義され蘇生処置を行い、Secondary Surveyの最初にCT撮影を行うこととしている。また、頭部外傷の重症度分類ではGCS3〜8点を重症、9〜13点を中等症、14、15点を軽症としている。脳卒中ガイドラインでは、高血圧性脳出血の手術的適応や術式に関してJCSが使用されている。しかし、GCS、JCSは評価者によって差異があるという問題を散見する。 そもそも、意識とは「外界からの刺激を受け入れ、自己を外界に表出することのできる機能」を意味している。「覚醒」「認知」「反応」の3つの要素があり「覚醒」は上行性網様体賦活系が、「認知」は大脳皮質が担っている。そのため、意識レベルの低下は脳幹の障害や広範囲の大脳皮質の障害を意味する。GCSは1974年に英国で外傷性脳障害による意識障害の評価スケールとして発表され、「開眼」「最良言語反応」「最良運動反応」の3側面を評価し、13段階120通りの組み合わせで評価される。先行文献では、E3/4、V4/5、M2/3/4/5の誤判定が起こりやすく、その原因としては、見当識障害の有無の判定、音声に対する開眼反応の判定、逃避と疼痛部位認識の運動の区別が挙げられている。JCSはGCSと同じ1974年に日本で頭部外傷や脳血管障害の急性期のおける脳ヘルニアの進行を評価するために開発された。GCSと比較しJCSは覚醒を中心に評価するため簡便であり医師、看護師だけでなく救急隊員なども習熟し、幅広い場面で使用されている。しかし、「JCS1:ほぼ意識晴明」や「JCS20:大きな声で開眼」、「JCS10:呼びかけで容易に開眼」など評価者の主観に影響されるため評価者間での差異が生じる原因となる。これらの評価者間での差異や誤判定の原因を踏まえた上で、正しい評価を行う方法とポイントを提示したい。また、GCSやJCSと同様、脳血管障害を疑う患者に使用することの多い徒手筋力テスト(MMT)も評価者の主観によって患者の筋力を判定するため差異が生じやすい評価スケールである。MMTの誤判定は症状悪化の早期発見を妨げるだけでなく、転倒転落などの事故の発生や不必要な身体拘束の実施など患者へ多くの不利益が生じる恐れがある。MMTについても正しい評価方法を検討したい。