第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD2] COVID-19時代の看護教育

Sat. Jun 11, 2022 10:00 AM - 11:20 AM 第10会場 (総合展示場 G展示場)

座長:浅香 えみ子(東京医科歯科大学病院)
   政岡 祐輝(国立循環器病研究センター)
演者:藤崎 隆志(一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院)
   益田 美津美(名古屋市立大学大学院看護学研究科)
   向江 剛(山口大学医学部附属病院)
   古谷 和紀(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

10:20 AM - 10:40 AM

[PD2-02] 看護基礎教育課程でのDX化の取り組みと今後の展望

○益田 美津美1 (1. 名古屋市立大学大学院看護学研究科)

Keywords:看護基礎教育、DX

2020年から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大という未曽有の事態では, 現実世界での活動を前提としていた教育はおおきな変容を迫られた.発生から2年以上が経過し,未だCOVID-19の制限を受けながらの教育が続いている.驚いたことに,現在の看護学生は,大学生活のほとんどをCOVID-19とともに過ごし,制限がある中での大学生活や看護実践が彼女らの通常となっている.2020年当初を振り返ると,多くの大学で看護学教育の軸となる臨地実習が中止あるいは学内実習やオンライン実習に置き換えるといった,教育者も今までに経験したことのないような出来事が起こり,私自身も先の見えない不安を抱えていたように思う.しかし,今にして思うと,これは看護学教育のDX化の促進につながったとも言える.そこで,本セッションでは,COVID-19感染拡大による制限下での看護基礎教育課程での取り組みと,これによって加速した教育のDX化の現在、未来について皆様と考えてみたいと思う.まず,本学においてCOVID-19下で取り組んだ教育方法について紹介したい.本学では,4年次にクリティカルケア看護学実習として,ICUと救命救急センター初療室で実習を行なっている.ICUでは重症患者を受け持ち,苦痛や倫理的問題にも焦点を当てながら看護過程を展開し,救命救急センターでは,Tanner,CAの臨床判断モデルに基づく気づきのトレーニングを実施している.しかしながら,2020年度はCOVID-19により臨地での実習が中止となったため,急遽,ICUでの実習を模擬事例によるPaper Patientに,気づきのトレーニングをバーチャルシミュレーションに置き換えてオンライン実習を行なった.これらのオンライン実習による効果を考えると,思考のトレーニング,つまり臨床判断能力の育成や,学習機会の均てん化という一定の質の担保は可能であったと感じている.一方で,ガニエの学習成果分類の運動技能の習得までを含んだ看護実践の場で実際にケアに参画し看護を実施することは,やはり臨地での学びに勝るものはない. このようなCOVID-19下での教育的取り組みの経験から,今後の看護基礎教育の方向性を考えてみたいと思う.COVID-19下での看護基礎教育で私が学んだことは,臨地でなければできないこと,臨地ではなくてもできることを棲み分け,必要であればデジタル技術を活用することで看護学教育の質の担保および強化が図れるのではないかということである.臨地実習では,学生は一人の患者を受け持ち看護展開するのが通常と思われる.このような学習は受け持った患者によって学びの質が異なる.加えて,昨今の医療安全,患者意識の高揚などの観点から看護技術の習得への制約がある.一方,DX教材では思考のトレーニングはできるが,社会性や総合的な実践力を習得するには限界がある.そのため,DX教材を活用した学習や学内演習により全員が同じアウトカムの達成を目指し繰り返し何度も学習し,質を担保する.そして,臨地実習でそれを実践することで臨床実践能力を高めるということが可能であると考えている.このように,COVID-19下での教育の学びを経て,看護学教育の更なる発展に寄与したい.