第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD2] COVID-19時代の看護教育

Sat. Jun 11, 2022 10:00 AM - 11:20 AM 第10会場 (総合展示場 G展示場)

座長:浅香 えみ子(東京医科歯科大学病院)
   政岡 祐輝(国立循環器病研究センター)
演者:藤崎 隆志(一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院)
   益田 美津美(名古屋市立大学大学院看護学研究科)
   向江 剛(山口大学医学部附属病院)
   古谷 和紀(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

11:00 AM - 11:20 AM

[PD2-04] COVID-19により見つめなおされる「主観を伝える」看護教育

○古谷 和紀1 (1. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻/京都大学医学部附属病院)

Keywords:仮想現実(VR:Virtual Reality)、一人称視点、主観

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)時代の看護教育として、本発表では現実に近い一人称の視点が体感できる仮想現実(VR:Virtual Reality)技術を用いた教育と効果を紹介するとともに、VR教育のニーズの高まりにより、「主観を伝える」ことを見つめなおす看護教育について議論を深めたい。
COVID-19の影響により、臨床現場では対面指導や研修が実施し難い状況となっており、また、看護基礎教育においては、非常事態宣言等により臨地での実習中止を余儀なくされ、実習に代えて学内での演習・実習等により必要な知識及び技能を修得する必要が生じている。このような状況のなかで看護教育においてVR技術を用いた教育のニーズが高まっていると考える。VRは、人間の五感すべてを拡張して現実に近い臨場感のある状況を構築することで、本質的あるいは効果として現実感を体験する技術であり、現実感のある一人称の視点を体験することができるシミュレーション<模擬体験>と、感情に作用する感覚の体験をポテンシャルとして持ち合わせている。クリティカルケア看護分野におけるVR教育コンテンツとしては、救急医療において心肺蘇生をうける当事者体験VRや、体外式膜型人工肺(ECMO)管理のトレーニングVRが知られているところである。これらVRコンテンツを活用することで相手の立場にたち、クリティカルケアの対象となる当事者の思いに寄り添ったり、医療チームでの互いの動きや経験を共有し、理解するためのツールのひとつにとなると考える。本発表においては、VR教材の魅力や選定、コンテンツ制作、教材を体験者に落とし込むプログラムとファシリテーションのポイントについて演者の経験から紹介する。
また、ケアの受け手である患者視点だけでなく、演者がVRなどでケア提供者である看護師の一人称視点の映像教材を作成するなかで、これまで臨床現場や臨地実習の指導者は「主観」をどのように具体的に学習者に伝えるのかに思いを巡らせるようになった。医療分野の情報通信技術がより普及されることにより、臨床や教育の場で看護師の一人称視点での体験やその振る舞いをリアルタイム映像で共有されることも想定される。現状の一例として、COVID-19患者に対応する臨床現場の看護で活用ができるのではないだろうか。その理由としては、感染隔離エリアという限られた人員しか立ち入りができないなかでの観察や判断、感染防護具を長時間着用してのケアなど孤立化が懸念される環境において、医師やスタッフ間でより現実感のある情報共有や判断ができ、医療チームとして体験世界の相互理解につながると考える。
COVID-19時代の看護教育は、客観を超えて主観を持つことが看護専門職には求められ、看護師の一人称視点での具体的な体験や振る舞いも含めて「主観を伝えること」が必要となってくるのではないだろうか。