第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD5] 災害発生時のクリティカルケア看護管理

Sat. Jun 11, 2022 1:00 PM - 2:10 PM 第6会場 (総合展示場 311-313会議室)

座長:川谷 陽子(愛知医科大学病院)
   佐藤 憲明(日本医科大学付属病院)
   高橋 美千子(磐田市立総合病院 看護部)
   井浦 弥生(社会福祉恩賜財団 済生会熊本病院)
   雀地 洋平(KKR札幌医療センター)

1:00 PM - 1:25 PM

[PD5-01] 災害発生!看護管理者は何をすれば良いのか

○高橋 美千子1 (1. 磐田市立総合病院 看護部)

Keywords:リーダーシップ、スピード感、早期対応

昨年より、私は病棟担当副看護部長として看護管理業務に従事している。また、DMATインストラクター、 DMATロジスティックスチームとしても活動をしている。これまで、DMATとして地震・水害・土砂災害・停電・新型コロナウイルス感染症と様々な災害対応を行ってきた。その中で災害時、看護管理者の役割として、DMAT看護師隊員の派遣調整や、院内対応では、病棟担当副部長として病床管理、各病棟の災害対応フローを作成したりし、フォローなどを行なってきた。現在、新型コロナウイルス感染症により、日本はおろか世界中が今まで経験したことのない状況と向き合い3年が経過しようとしている。全国的な患者増加に伴い医療資源の不足や、スタッフ・周囲の感染にて勤務調整によるマンパワー不足、コロナ病棟の陽性者入院患者数に応じた人員調整、スタッフの新型コロナウイルス患者を受け持つことによる感染リスクの不安などから、管理者のスピードと変化、力強いリーダーシップが求められた。7つの習慣のスティーブン・R・コヴィーは「大きな変化を望むならパラダイムシフトが必要である」と言っている。リスク分析し、PDCAサイクルを回し、出来ることをスピーディーに対応し変化をさせていく必要があった。新型コロナウイルス対応を主に災害発生時の対応を振り返り、看護管理者として必要なことを抽出する。
当院は2類感染症指定病院であり、新型コロナウイルス感染症が叫ばれ始めた頃、私は救命センター師長をしており、陰圧室とERの管理を行なっていた。突然の変化に対応していかなければならず、ICTにも協力を得て、副師長を交えてチームを作成し、そしてスタッフから意見を聞き、リスク分析を行った。見通しのつかない未来に人は不安になるため、スピード感を持って、管理者としての今後の方針を明確にしていく必要があった。その結果、多数のマニュアルを作成することが出来、スタッフも安心して患者の受け入れができる体制が整った。しかし、自身の部署だけの取り組みでは限界を感じ、組織への働きかけも必要であることが分かった。だが、組織的なサポートが思うように得られず、個人への負荷が増大し、自身を含め、数人のスタッフから高いストレス状態の反応が出ていた。そのため、院内で定期的な会議を開催し、情報を集約、評価し、問題や不安に対処する場が必要と考えた。防災マニュアルとは別の組織図を作成し、ICTへ提出をし、定期的な会議をしていくことを提案し、毎週会議が開催されるようになった経緯がある。そんなコロナ禍で院内クラスターが発生し、本部設営をし、DMATが本部運営の手伝いをしていたが、同時に近隣施設でのクラスター対応の派遣要請もあり、時間内での派遣が厳しくなっていた。しかし、クラスター対応として、DMATが介護福祉施設に介入をした例を挙げてみると、静岡県西部地区データーにて、DMAT/ICT早期介入施設の陽性利用者の死亡率は3.9%、厚生労働省が示す80歳以上の陽性者死亡者数12.3%と比べ低値であった。そのため早期に本部立ち上げ介入派遣の必要性を感じ、初期介入を継続した。
災害時、管理者は強いリーダーシップが求められる。それにはビジョン、スピード感、決断力、責任、誠実、チェレンジ精神が必要である。そして、クラスター発生した介護福祉施設へのDMAT/ICT早期支援にて陽性者の死亡率が低値を示しているところから、災害時は早期に情報を集約し、評価する場を立ち上げることが大切である。そして、職員も組織からのサポートを受けられている実感も出る。早期に情報を集約し、評価していく場を作ることは死亡率の低下、職員の心のケアに重要な役割を示している可能性がある。