1:25 PM - 1:50 PM
[PD5-02] 災害発生時のクリティカルケア看護管理
Keywords:災害時の看護管理、災害種別に応じた訓練、人材育成、受援体制
災害発生時、多くの病院は、災害フェーズに合わせ診療体制、看護体制を柔軟に変化させ、地域住民が求めるニーズに対応する役割がある。そのため、平時より、災害マニュアルや業務継続計画書(Business Continuity Plan:BCP)を策定し、病院機能を継続させることが重要である。救命救急センターを有し災害拠点病院であるA病院では、院内防災委員が中心となり、災害マニュアルやBCPの策定、多数傷病者受け入れ訓練を実施し、有事に備えていた。また、看護部の現任教育では、災害コースを企画し、部署ごとに現場に即したアクションカードを作成していた。 2016年発生した熊本地震では、連続した2回の震度7以上の地震が発生し大きな被害をもたらした。A病院も、貯水槽の破壊、水道の断水、本棚やカルテ庫が倒壊する被害を受けたが、BCPに則り、自家発電や地下水への切り替え、最低限のライフラインを確保し診療を継続した。 当時、私は、救命救急外来で看護管理業務を行うと同時に、院内防災委員、DMAT隊員として災害教育やマニュアル整備の役割を担っていた。熊本地震を振り返り、1.災害種別に応じた訓練や人材育成、2.受援体制整備が、看護管理者としての課題と考えたため、以下に述べる。 1.災害種別に応じた訓練や人材育成 災害マニュアルは、紙と電子媒体で準備し、各部署へ設置していたが、混乱する状況下では枚数が多く利便性が悪いことが明らかとなった。しかし、マニュアルと一緒に設置していたアクションカードは、スタッフの行動指針となり有効活用できた。 また、例年の災害訓練実施により、災害発生直後の自主参集、本部設置、受け入れ準備は、混乱なく受け入れ体制確立が図れた。災害種別や様々な状況を想定し、地域から求められる病院役割を考慮し、実働可能なマニュアルの整備や現場に即した訓練を実施することが課題と捉える。現在、アクションカードの見直しとマニュアル改訂、WEBを活用した参集訓練や未参集者の安否確認訓練、現任教育内容や研修方法を検討し、災害対応能力向上を目指した人材育成に取り組んでいる。 2.受援体制の整備 災害時の支援体制については、計画的人材育成や物品整備をしており、被災地へのDMATや災害支援ナースの派遣を複数回経験していた。しかし、受援体制については、十分ではなく、熊本地震時に他職種と協働し、受け入れ窓口の一本化を行うなど、受援体制を構築した。看護部で行った取り組みとして、まず、支援者担当を明確化し、支援者の看護経験や専門スキルを把握した。その上で、個人に合わせた役割分担の実施や勤務場所選定、勤務シフトを調整した。平時から、繁忙状況により、病棟を超えた応援体制を構築しており、外部支援者への依頼内容等の標準化が円滑に実施出来た。今後は、院外支援者に対し、医療安全的視点を含め、権限移譲の範囲等を検討しマニュアルに明文化する必要がある。また、病院として、地域や関連施設間で協議し、支援や受援の基準策定をしておくことが、円滑な受援体制に繋がると考える。 看護管理者は、刻々と変化する状況に応じ、正確な情報収集や迅速な判断が求められる。 今回述べた2点以外にも、災害発生時の安全確保、病床管理、人員調整、職員サポートなど看護管理者としての役割がある。平時に様々な有事を想定し訓練や計画的人材育成、災害発生時体制整備の改定を重ねていくことが重要である。