第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD6] 小児のクリティカルケア看護の教育を考える

Sat. Jun 11, 2022 2:10 PM - 3:20 PM 第9会場 (総合展示場 F展示場)

座長:中田 諭(聖路加国際大学)
   辻尾 有利子(京都府立医科大学附属病院)
   青木 悠(聖路加国際病院 救命救急センター)
   四宮 理絵(香川大学医学部附属病院 救命救急ICU)
   藏ヶ﨑 恵美(福岡市立こども病院 PICU)

3:00 PM - 3:20 PM

[PD6-03] 心臓血管外科手術後の小児患者に対し看護実践をするPICU看護師の教育の現状と課題について

○藏ヶ﨑 恵美1 (1. 福岡市立こども病院 PICU)

Keywords:PICU、看護師教育

質の高い医療・サービスの提供が求められる今日、組織においては優れた人材の育成と活用がより一層求められる1)と言われている。病院理念「こどものいのちと健康をまもる」の下、小児集中治療室(以下PICU)は、小児とその家族に質の高い看護とサービスが提供できるPICU看護師の育成に取り組んでいる。当PICUは、重症先天性心疾患小児患者の手術直後からの集中ケアを担っており、クリティカルケア看護と小児看護、更には心臓血管外科術後看護という専門性の高い看護を求められている。そのため、PICU看護師はストレスの高い環境下で知識と技術を習得していかなければならず、やりがいを感じられるまでになるには多くの困難があると思われる。今回、副看護師長であり集中ケア認定看護師の立場から当院PICUの現状と課題について述べる。
当院は2014年に新病院として移転、2015年からPICU病棟として運用開始した。PICUは8床、入室する小児は心臓血管外科手術後であり、手術は年間400例を超える。入室する小児の年齢は生まれて間もない新生児から複数回手術を受けた思春期までで、この内新生児・乳児期が6割を占める。小児の心臓血管外科術後管理は根治術と肺体血流比バランスが鍵となる姑息術があり、その特殊性から術後看護について明記した教本は殆どなく、自己学習が難しい。 当PICUへの看護師の配属は、以前は他施設・他病棟の経験者のみであったが、7年前より小児の手術後や集中ケアにかかわりたいと希望する新卒新人看護師も含まれるようになった。現在、当病棟のスタッフ構成は、看護師経験3年未満が3割、4~9年未満が3割、残り4割は10年以上である。当病棟の教育は、入職して半年以降に夜勤勤務、1年後には新生児期の先天性心疾患根治術直後の小児患者の受け持ちとして担当できるように指導をしている。2年目で胸腔ドレーン挿入介助、中心静脈カテーテルや動脈ライン留置介助など当病棟に必要な処置が自立して行え、3年目でリーダー業務やECMOなど補助循環が必要な先天性心疾患術後の小児患者を受け持つことができるよう医師・教育担当スタッフと協働したoff‐JTを行っている。
以上のことから、当病棟の看護師教育の課題について3点述べる。1つ目は、今まで配属した新人看護師は、小児看護とは幼児期や学童期のこどものプレパレーションをすることをイメージし、病気と闘うこどもたちの看護に携わりたいという思いを胸に入職している傾向にある。しかし現実は、重症心臓血管外科手術後で新生児・乳児が多く、治療上鎮静治療を受けている小児患者を看ている当病棟では小児とのコミュニケーションとることが少なく、モチベーションに影響している。2つ目は、当病棟は、知識や技術だけでなく、新卒新人看護師がリアリティショックとならないよう面談を頻回に行うなど新人教育に注力する一方、2年目以降の教育まで行き届かないことである。3つ目は、術式による血行動態とパラメータを用いて経時的に述べることができるが、心不全や鎮痛鎮静・せん妄、離床といったクリティカルケア看護の視点でのアセスメントについて文章化することが難しいことである。
今回は、当病棟の看護師教育の課題と現在行っている取り組みについて紹介した上でディスカッションし、小児とその家族にとって質の高い看護が提供できるPICU看護師教育の在り方について深めたいと考える。
引用文献
1)手島恵:すぐれた人材の育成と活用,井部俊子/中西睦子監修,手島恵編集,看護管理学習テキスト第2版 第4巻 看護における人材資源活用論,日本看護協会出版会,58,2018