第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD6] 小児のクリティカルケア看護の教育を考える

Sat. Jun 11, 2022 2:10 PM - 3:20 PM 第9会場 (総合展示場 F展示場)

座長:中田 諭(聖路加国際大学)
   辻尾 有利子(京都府立医科大学附属病院)
   青木 悠(聖路加国際病院 救命救急センター)
   四宮 理絵(香川大学医学部附属病院 救命救急ICU)
   藏ヶ﨑 恵美(福岡市立こども病院 PICU)

2:35 PM - 3:00 PM

[PD6-02] 救急外来における重症小児患者の初期対応力を高める取り組み

○四宮 理絵1 (1. 香川大学医学部附属病院 救命救急ICU)

Keywords:救急外来、重症小児患者、虐待

香川県は日本で最も面積の小さい県であり、県内のアクセスは非常に良い。当院(全613床)は第3次救急医療施設であるが、地域の基幹病院として1次から3次救急までの救急搬送患者を受け入れている。さらに小児救急医療として、初期から2次救急患者を診る病院群輪番制も担っている。県内では小児の3次救急対応ができる病院は限られているため、重症小児の救急患者は、瀬戸内の離島を含む県内各地から搬送されている。今年度からドクターヘリの運用も開始となり、今後より一層当院が担う役割は高まっていくと考えられる。 頭部外傷やCPA等救急搬送時に事故か虐待を疑うような場合には、搬送時の情報収集や洞察力、家族との関り方など看護師に求められることは多岐に渡る。現在のところ、当院の重症小児の救急搬送件数は、年間を通して数例程度である。そのため重症小児患者の対応経験が乏しいスタッフも多く、救急搬送時の初期対応の煩雑さや必要物品の選択にとまどいと不安を感じている。 そこで重症小児患者の対応経験が乏しいスタッフであっても、迅速で適切な対応ができることを目指し、救急外来の環境・小児物品整理、ツールの作成にこれまで取り組んできた。 例えば、モニターや挿管・ルート、薬剤等の必要物品の写真を多用した視覚的な小児CPAシートの作成や小児用救急カートの物品のセットとチェックリストの作成などがあげられる。これらのシートは救急搬送時の受け入れ準備を事前学習や記憶に頼らなくても、効率よく可能にするものである。 さらにOJTとして救急外来での小児CPA例を想定し、作成した小児CPAシートと小児用救急カートを使用したシミュレーションを行っている。 この方法は実際の場面を想定して物品の準備や初期対応を体験することとなり、どのスタッフでも迅速で適切な対応につながる効果を期待している。 これらのツールを活用したシミュレーションを繰り返すことは、現場経験の乏しいスタッフにとって知識・スキルの向上とイメージ化が図られ、救急搬送時の初期対応時の煩雑さの低減や不安の軽減につながるのではないかと考える。 また、小児病棟と救命病棟とのスタッフで小児CPA対応や小児BLS、虐待をテーマとした合同勉強会を実施している。例えば、小児死亡事例の場合は症例が少なく、困難さを感じやすいため、家族からの質問内容やその時の看護師の受け答えや看護師が抱いた感情の振り返りなどがあげられる。このような事例は経験値を積み上げるのが困難で、状況により対応も様々であり、救急病棟と小児病棟の現場のそれぞれの立場や経験の違いを共有する機会となっている。 これまで私自身、頭部外傷やCPA等救急搬送時に事故か虐待を疑うような場合の対応の困難さを実感している。そこで、虐待を疑う初期対応医師や看護師、救急隊員など多職種間で連携を図ることが虐待への早期介入を可能とすると考え、救急隊員の虐待対応と多職種連携に関する研究に取り組んでいる。小児救急医療の現場では、虐待を疑う症例の初期対応の質向上のために、救急外来における救急隊からの情報入手が鍵となる。看護師も虐待対応の視点で必要な情報を考え、連携が図れるように救急現場に特化した虐待対応のシミュレーション教育を医師・看護師・救急隊員等の多職種で実施することを考えている。 今後もこれら救急外来でのクリティカルケア看護教育を積み重ねることで、小児救急医療のさらなる質向上を目指していきたい。