9:50 AM - 10:10 AM
[PD7-03] 眠れるICUを目指して −主観的睡眠評価を用いた睡眠ケアの改善にむけて−
Keywords:睡眠評価、睡眠の質
当院集中治療室では、2021年より日本語版Richards-Campbell Sleep Questionnaire(RCSQ)を用いた睡眠の質指標を測定している。そもそも、なぜ睡眠について測定するようになったかというと、2019年から取り組んできた「せん妄予防ケアの見直し」がきっかけであった。まず、最初に行ったのはせん妄発症率の測定であった。しかし、せん妄発症率を測定するには、2つの課題があった。まず、評価対象の基準が決まっていないこと、そして、そもそも評価方法が決まっていないということであった。そこで、評価基準、評価方法を確立し、せん妄発症率が測定できるようになった。次に行ったのは、そのデータを利用した、せん妄発症の要因分析であった。その結果、せん妄患者の約8割が、睡眠障害を持つことがわかった。睡眠障害はせん妄の誘発因子であり、また、同時にせん妄それ自体の症状であるから、睡眠障害が必ずしもせん妄を誘発するかは不明であるが、眠れないこと自体がせん妄を誘発すると考えるのは妥当だと考えた。睡眠障害は、ICUという特殊な環境の中で常に課題としてあげられるものの、環境を考えると十分睡眠が取れないのは仕方ないと考えてしまう傾向がある。本当に仕方ないのか、看護ケアで睡眠の質を高めることはできないのか。そもそも、本当に患者は眠れていないのか、まずはその実態を探るべく2021年よりRCSQを用いた評価を開始した。最初は、睡眠の質をどの様に測定すれば良いのか頭を抱える状況であった。看護記録から患者の睡眠状況を抽出しデータとする案や、睡眠ケアバンドルを用いたケアの実践と看護師の意識の変化を見る案など多彩なアイデアは挙がったが、継続的に指導を受けていた大学教員から「現状がわからないと向かう先もわからない」とアドバイスを受けた。つまり、現状とは患者の睡眠の実態であり、看護師が認識する睡眠状況ではなく、その実態を測定しなければ看護ケアの効果を評価することも不可能であるという示唆を受けた。現在もRCSQに関するデータの収集に加え、分析を行っている。 CAM-ICUの導入など、スタッフ全員が同じ評価ツールを使用し、繰り返し評価することは、せん妄に対する観察力の向上に繋がった。同時に病棟スタッフ病棟全体がせん妄の早期発見、早期対応への空気が流れるようになったと感じた。これも、指標を活用する事による効果だと感じている。 しかし、課題も山積している。本発表では、これまでの取り組みに加え、今後の展望も含め、共有できれば幸いである。