第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD7] クリティカルケア看護のQIを考える

Sun. Jun 12, 2022 9:00 AM - 10:30 AM 第3会場 (国際会議場 国際会議室)

座長:卯野木 健(札幌市立大学)
   辻本 雄大(奈良県立医科大学附属病院)
演者:河原 良美(徳島大学病院 看護部)
   相川 玄(筑波大学附属病院 集中治療室)
   乾 茜(医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院)
   佐々木 亜希(札幌医科大学附属病院)

10:10 AM - 10:30 AM

[PD7-04] ICU患者が体験する、”Discomfort”に焦点を当てたQIの取り組みについて

○佐々木 亜希1 (1. 札幌医科大学附属病院)

Keywords:discomfort、口渇、呼吸困難感

日々、患者と関わる中で、「喉が乾いた」「水が飲みたい」「寝られない」「酸素が足りない感じがする」「お腹がすいた」「暑い」「寒い」「寂しい」「不安」など患者のdiscomfortな表出を耳にする機会は多くはないだろうか。  
 私達は、患者が体験するdiscomfortをどのぐらい理解する事ができているのか。日々のケアを通して、疑問に感じる事がある。なぜなら、患者の表出するdiscomfortsは、優先順位が低い事柄として扱われてしまう場面に遭遇するからである。私達は患者のdiscomfortを過小評価していないだろうか。そして、私達が想像している以上に、患者のdiscomfortは多く、深刻度も強いと考えられる。  
 人工呼吸器管理を要する患者のdiscomfortの原因は、疼痛、呼吸困難感、口渇、睡眠不足、不安、自由がないこと、コミュニケーションが取れない事と言われている(Schmidt et al. 2014)。身体的な要素だけではなく、「騒音」「明るい」「面会の制限」「電話ができない」「情報がない」などICUの環境や制限なども、discomfortの要因となっている(Baumstarck et al. 2019)。
 口渇は、ICUに入院している患者の約80%が経験する症状であり、口渇の苦痛は中等度である事が言われている(Puntillo et al. 2010)。また、持続する口渇、喉の渇きは、せん妄に移行する可能性がある事が示唆されており(Sato et al. 2019)、口渇ケアは患者のdiscomfortへの介入と共に、せん妄予防の一貫にもなる事が考えられる。しかし、当院ICUでの口渇ケアは、統一されたケアはなく、看護師判断に委ねられているのが現状である。  
 人工呼吸器管理を要している患者の、約半数は呼吸困難感を感じており(Schmidt et al. 2014)、また、多くの患者がその時の記憶を苦痛やストレス体験として覚えている(Rotondi et al. 2002)。呼吸困難感は患者の恐怖となり、後のPTSDの原因となり得る可能性がある。呼吸困難感を改善するためには、観察した内容を評価する事が重要である。しかし、疼痛の評価のように、呼吸困難感を経時的評価した報告は殆どない。  
 当院の患者においても、呼吸不全患者のリハビリテーションやウィーニングを行う際に、呼吸困難を訴える患者が多くいる。ベッドサイドに近い看護師が、呼吸困難感をタイムリーに評価することによって、患者の苦痛を最小限にすることが可能と考えられる。  
 今回そこで私たちは、患者のdiscomfortの症状の一つである、口渇と呼吸困難に着目し、2021年12月より、口渇のスコアリングと、2021年に日本語に翻訳された、日本版Japanease version of Respiratory Distress Observation Scale(RDOS)(Sakuramoto et al. 2021)を用いて、呼吸困難感のスコアリングを開始した。  評価のために看護師への学習会の開催、評価の開示等を行い、患者の苦痛に着目した看護師の意識を向上させる働きかけを行った。  
 今回、この2つのスコアリング導入に至るまでの経緯と、スコアリングの結果、実際の活動内容及びQI測定における障壁について報告する。