第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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特別講演

[SL3] ICUナースに知っていてほしい緩和ケア

Sat. Jun 11, 2022 2:20 PM - 3:50 PM 第6会場 (総合展示場 311-313会議室)

座長:田中 雄太(東北大学大学院医学系研究科)
演者:宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科)
   石上 雄一郎(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科)

2:20 PM - 3:05 PM

[SL3-01] がん患者に対する緩和ケア:概念と質の評価

○宮下 光令1 (1. 東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)

Keywords:緩和ケア、終末期

2020年に全国の救急看護認定看護師、急性・重症患者看護専門看護師を対象に行われた調査では「WHOにおける緩和ケアの定義」を「知っている」と回答した割合は32%、「少し知っている(42%)」「あまり知らない(18%)」「全く知らない(6%)」であった。私はこの調査による緩和ケアの定義の認知度は決して低くはないと思う。それは看護基礎教育の成果でもあり、救急看護認定看護師、急性・重症患者看護専門看護師の皆様がよく勉強されているということかもしれない。
 がん領域では2007年のがん対策基本法施行後にがん診療連携拠点病院の整備、診療報酬の充実、調査・研究など多くの施策が実施され、大きな進歩が得られた。看護では拠点病院では緩和ケアチームの設置および専門資格を持つ看護師が専従になることが義務化されたこと、看護師のみの面接で診療報酬が獲得できる「がん患者指導管理料(ロ)」が新設されたことなどが大きな進歩として挙げられる。  
 最近の緩和ケアのトピックは(すでに10年前になるので最近でもないが)、緩和ケアは必ずしも終末期だけのものではなく、再発・転移が発見された時点から専門的緩和ケアが介入することによりQOLが向上するだけではなく、生存期間を伸ばす可能性がある論文が発表され、「早期からの緩和ケア」が推進されるようになったこと、疼痛やその他の症状に対する新しい薬剤がいくつも上市されたこと、一時は6%程度まで低下したがん患者の自宅死亡率が13%程度まで上昇したことなどである。  
 そして、最も最近の大きな進歩が、緩和ケアの非がん疾患の拡大である。世界的には緩和ケアは疾患を問わないものであるが、わが国では現実的に「がんと少数のAIDS患者」を対象とするものであった。それが、2018年に「がんとAIDS」に限られていた一般病棟における緩和ケアチームの1回の診療当たり200点の診療報酬を請求できる「緩和ケア診療加算」に「心不全」が追加された。長らく「がんとAIDS」に限られていた緩和ケアを非がん疾患に拡大する嚆矢が放たれ、今後の展開が議論されている。  
 私はいままで主にがん領域における緩和ケアの質の評価に関する研究を行ってきた。本講演では、がんに対する緩和ケアの基本的事項から、緩和ケアの質の維持・向上に対する取り組みなどに関する研究を紹介する。その後、石上先生や司会の先生とクリティカルケア領域における緩和ケアのあり方について議論したい。  
 私がいままでクリティカルケア領域の看護師と接してきた印象は「とにかく行動力がある」「速い」「熱意がすごい」である。クリティカルケア領域の緩和ケアはがん領域が何十年かけて達成してきたことを、短期間で達成でき、それを凌駕する可能性も秘めていると思う。
SL3-01