第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY10] クリティカルケア看護の最前線で活躍している研究者は、どんなことを考えて研究をしているのか

2022年6月12日(日) 10:40 〜 12:10 第3会場 (国際会議場 国際会議室)

座長:菅原 美樹(札幌市立大学)
   佐藤 まゆみ(順天堂大学大学院医療看護学研究科)
演者:松石 雄二朗(聖路加国際大学 ニューロサイエンス看護学)
   石川 幸司(北海道科学大学 保健医療学部看護学科)
   野口 綾子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
   卯野木 健(札幌市立大学看護学部)

10:40 〜 11:05

[SY10-01] PICU看護師のネットワークの必要性(多施設研究・多国間研究の推進)

○松石 雄二朗1 (1. 聖路加国際大学 ニューロサイエンス看護学)

キーワード:PICU

成人集中治療看護に比べて小児集中治療看護は未だ狭い領域であり、研究者の数も少ない。そもそも日本国内においてはPICU自体も少なく、臨床実践している看護師の数も少ないのが現状である。 私は元々成人ICUで働き、PADIS(痛み、不穏 / 鎮静、せん妄、不動、睡眠障害)をアセスメントし、症状のマネジメントを行う必要性を体感していたことから、PICUで働くようになってからも疼痛・不穏・せん妄・不動・睡眠に関する研究を進めてきた。近年の国内の研究を見ていると、小児領域においても、疼痛やせん妄に関する研究が報告されてきており、ようやく小児領域のPADISに関する研究が始まったという状況であると考える。また、成人領域ではPICS(集中治療後症候群)に関するも進んできているが、小児領域においては未だPICSは研究が進んでおらず、今後は小児領域においても患者及び家族の退院後のQOL向上に関する研究が重要になってくると考えている。 他国の動向を見ていると、ヨーロッパ・アメリカにおいては小児領域でもICU退室後のQOLに関する研究が始まっており、多国間研究が現在進行している。 これと比較して、アジア圏での小児領域の多国間研究は未だ盛んではなく、小児のPICSの認知も進んでいない。このようなことから、まずは小児集中治療看護領域では日本国内の結束した研究ネットワークが必要ではないかと考えている。 また、小児集中治療看護領域では研究のみならずケアの質の標準化に関しても進んでいない。それぞれの施設がそれぞれのケアの方法を行っており、ケア内容と方法に一環したコンセンサスが得られていない現状がある。 本シンポジウムの趣旨の通り、臨床と研究は本来つながっているべきであるが、小児領域においては特に研究と臨床がかけ離れた状態にある印象がある。 しかし、本来であればPICUに勤務する看護師は人数も少ないことから成人ICUよりも結束しやすいのではないかと考える。昨今の研究スタイルを見ていると、インターネットやソーシャルネットワークを使った研究も盛んに行われており、データの共有に関してもクラウドを用いたものも多く見受けられる。情報の共有に関する技術の発展により、多施設研究または多国間研究は以前よりも容易に行える時代になっており、うまくネットワークを築くことができれば、小児集中治療看護領域の研究も大きく飛躍するのではないかと考える。 よって、本シンポジウムに興味のあるような臨床に根ざした研究に関心のある小児集中治療領域の看護師が、学会や勉強会等の機会を通してコネクションが得られるような体制を築けることが私の今後の目標である。