第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY10] クリティカルケア看護の最前線で活躍している研究者は、どんなことを考えて研究をしているのか

Sun. Jun 12, 2022 10:40 AM - 12:10 PM 第3会場 (国際会議場 国際会議室)

座長:菅原 美樹(札幌市立大学)
   佐藤 まゆみ(順天堂大学大学院医療看護学研究科)
演者:松石 雄二朗(聖路加国際大学 ニューロサイエンス看護学)
   石川 幸司(北海道科学大学 保健医療学部看護学科)
   野口 綾子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
   卯野木 健(札幌市立大学看護学部)

11:05 AM - 11:30 AM

[SY10-02] 臨床に役立つ研究活動に向けて

○石川 幸司1 (1. 北海道科学大学 保健医療学部看護学科)

Keywords:臨床研究

本邦では、研究者の多くは基礎教育や卒後教育を実施する教育機関に所属しており、純粋に研究のみを実施している研究者は非常に少ないのではないだろうか。研究者は、基礎教育の学部生や卒後教育の大学院生への教育を主として働いており、研究へのエフォートが不十分になってしまうと感じている(研究者というより、教育者…)。これは、学生に対する教育は、多忙という理由で先延ばしにはできないが、研究は少し落ち着いてから…という思いからかもしれない。研究を実施する人を研究者というのであれば、臨床現場にも多く研究者は存在する。しかし、多忙な臨床において研究に多くの時間を費やすことは容易ではない。
このような背景において、研究を実施するにあたり、考えていることを整理する。やはり、まずは時間の確保であろう。研究を実施するには時間が必要である。暇な時間を見つけて…と考えている間は研究に取り組むことは困難であろう。時間を調整するというより、この研究が完成すると、こんな意義があるだろう、早く投稿して公開したい、など具体的に完成したときのイメージを強く持つことにしている。そうすることで、早く研究に取り掛かりたいという動機が強くなり、少しの時間を見つけてでも取り組むようになる。
次に、できる限り臨床と近くあろうと考えている。これは、教育機関における実習だけではなく、自身で主体的に臨床に触れられる状況が良い。附属病院がない教育機関に在籍している研究者は、ハードルが高いかもしれないが、臨床現場に立っているか否かでは研究に取り組むためのアイディアや臨床疑問の質が異なる。しかし、これも時間的な余裕だけではなく、職場などのシステムから実現不可能なことも少なくない。そのような場合、臨床現場の第一線で働いているスタッフと協働できる場を作ることである。日進月歩する医療現場では、研究論文として紙面上にエビデンスが記述されていても、それを臨床でどのように活用するかが重要となる。実際の臨床現場での情報、新たな知見の状況などを共有し、共同研究として取り組む形が望ましい。
最後に、研究を実施するにあたり、この研究を実施することでどのような効果が得られるのか、期待する結果を考える。やはり、実践が重要である看護において、臨床現場で実用できるもの、疑問に感じていたことを解決できるものかを重要視している。たとえ素晴らしい研究デザインであっても、臨床での活用性が少ないものであれば、時間、労力、費用をかける価値はあるだろうか。研究者自身の疑問を解決するだけではなく、実際の臨床で活用してもらえそうな、活用するきっかけとなる内容かが重要と考える。
本セッションでは、このような考えをもとに実際に取り組んできたテーマを紹介し、研究計画を実現させるために行ってきた調整(メンターを見つけるなど)、実施内容について紹介する。