第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

トリアージ

[O1] O1群 トリアージ①

2019年10月4日(金) 10:20 〜 11:20 第4会場 (3F 中会議室301)

座長:奈良 史恵(関越病院)

[O1-5] 救命救急センターでの院内トリアージにおける看護師の不安の要因

中村 ひかる, 川治 洸樹 (福井県立病院救命救急センター)

【はじめに】A病院の救命救急センターに所属する看護師は、院内のトリアージ研修修了後、救急外来に来院する患者に対し、院内トリアージを実施している。しかし、看護師から「初めて出会う患者や家族と問診時にどう関われば良いのか分からない」などの不安な声が聞かれた。そこで、看護師の院内トリアージにおける不安軽減の一助とするため、本研究に取り組んだ。【目的】院内トリアージを担う看護師が抱く不安の要因を明らかにする。【方法】対象:救命救急センターに所属する看護師経験年数2年目以上の看護師30名。期間:平成30年1月~2月、無記名式質問紙調査、調査項目は先行文献を参考に独自に作成し、プレテストを実施した。質問は、12項目から成り、4段階で評価を求めた。【倫理的配慮】A病院倫理委員会の審査を受け承認を得た。【結果】アンケートの回収数は30名中27名で有効回答数は25名であった。研究対象者の救急従事年数は、『3年未満』11名、『3年以上5年未満』5名、『5年以上』9名であった。12項目で救急従事年数別に比較した結果、「とても思う」と「そう思う」を合わせ70%以上の項目は、「トリアージレベルを決定する際に知識不足を感じたことがある」「病態についての知識不足を感じることがある」「問診時に患者・家族からクレームを言われストレスを感じたことがある」であった。「自分にフィジカルアセスメント能力はない」は、『3年未満』のみ「とても思う」と「そう思う」を合わせ72%であった。また、「トリアージ研修で得た知識は活かせていない」は、「とても思う」と「そう思う」を合わせて、『3年未満』9%、『3年以上5年未満』20%、『5年以上』11%であった。【考察】渡邊は「トリアージナースには、基本的知識や技術に加え、幅広い病態に対するアセスメント能力等の専門的知識とスキルが求められ、これらの知識は救急看護の豊富な経験と専門的教育によって習得される」1)と述べている。本研究では救急従事年数に関わらず、トリアージ研修で得た知識は活かせていないと思う者は少ないが、トリアージレベルを決定する際の知識不足や病態についての知識不足だと思っている者が多かった。救急従事年数に関わらず、知識についてトリアージ研修以外の要因があることが推察された。救急従事年数の短い看護師は、実際の患者に対して、フィジカルアセスメントを含めた実践や病態の理解が不足だと感じるのではないかと考える。救急従事年数の長い看護師は、小児から老人まで様々な患者が受診し、幅広い疾患の知識が求められる救急外来の多岐性のためではないかと考えられる。以上のことから、トリアージの知識や病態の理解のレベルには段階があり、それらを明確にすることで漠然とした不安が軽減できるのではないかと考える。また、救急従事年数に関わらず「問診時の患者・家族からのクレーム対応」が不安の要因であった。トリアージを実施する際、患者・家族からのクレームを受ける機会が多い救急外来の特殊性が一因だと考える。トリアージによって緊急性はないと判断されると、患者・家族にとって身体的・精神的苦痛があるにも関わらず待ち時間は長くなる。それらの不満に対して、看護師はどう対応すれば良いのか迷うことも多く、さらに不安を感じるのではないかと考える。そのため、少しの時間でも定期的に時間を設け、自分の感じた不安を共有し、クレーム対応策を看護師全員で考えることで、不安の軽減に繋がると考える。引用文献1)渡邊淑子:トリアージナースに必要とされる能力, Nursing Today,26(1),p18-20,2011.