[O11-1] 救急患者に対する鎮静プロトコルの作成と実用性の評価
Ⅰ.目的
救急患者の搬入理由は内因・外因問わず幅広く、中枢神経障害を合併する頻度も高いため、鎮静鎮痛管理におけるプロトコルの実践は困難なことが多い。本研究の目的は、救急患者に対する鎮静プロトコルを作成・導入し、それに基づき鎮静鎮痛レベルの目標値を設定し、医師・看護師が統一した視点と手順で鎮静鎮痛管理が可能かを検討することである。
Ⅱ.方法
研究対象:当院高度救命救急センターに入院した43~81歳の男女5名の患者。疾患はCO中毒、髄膜炎、心不全、外傷(小児、中枢神経疾患、精神科疾患、認知症、中毒を除外した)。 研究期間:平成30年3月21日~8月20日 研究方法:患者5名を対象に、当院で作成した「鎮静プロトコル」に従い鎮静管理を行った。プロトコルでの薬剤管理方法は、デクスメデトミジンを0.4(μg/kg/hr)で投与し、それに加えミダゾラムまたはプロポフォールのいずれかを併用した。投与開始量、最小~最大投与量、一回増減量を医師が指示し、看護師が状態に応じて薬剤量を調整する内容とした。このプロトコルを用いて鎮静管理を行い、2時間毎またはイベント発生時のCPOT、RASSの評価と薬剤量を記録した。さらに、睡眠状況や疼痛の有無などの聞き取り調査を行った。これらの調査は、病棟入室時と流量変更時、全身観察と意識レベル確認を行う時間帯に行った。 倫理的配慮:倫理委員会の承認後、高度救命救急センター看護記録や診療記録からデータ収集を行った。同意書により研究の同意を得、関連資料は厳重に保管した。
Ⅲ.結果
3症例でプロトコル開始48時間以降の鎮静剤流量の変更なし、又は変更回数が減少し、RASS-3~+1の目標範囲にコントロールできた。さらにCPOTは48時間を境に0~5から0~3に低下した。他1例は開始24時間以内に鎮静を中止し、短時間でプロトコルが終了した。残りの1例は鎮静、鎮痛ともに全ての期間でコントロール不良であった。また、鎮静コントロール中に血圧低下したため、鎮静剤をプロトコル指示外で2回減量した症例があった。対象のうち4例で疼痛の有無と部位、睡眠状況を聞き取ることができた。1例は浅鎮静であったが聞き取りができなかった。全症例でプロトコル管理中に自己抜管等の重大インシデントの発生はなかった。
Ⅳ.考察
我々が作成した鎮静プロトコルを救急患者に導入したが、おおむね鎮静開始後48時間までには目標とする鎮静レベルにコントロールすることができた。鎮静、鎮痛ともに全ての期間でコントロールが不良例は、聞き取り調査を行った全ての時間帯で「痛みがある」 と答えており、鎮痛対策が不十分であったことが鎮静不良の原因と考えられた。また、持続鎮痛鎮静管理においては、ガイドラインに基づき鎮静剤の定期的な一時中断が必要と考えられた。
プロトコル管理中に重大インシデントの発生はなく、救急患者に対しても十分な疼痛コントロールで浅い鎮静管理が可能と考えられた。また、浅鎮静の症例ではNRSで評価が可能であり、より主観的な痛みの評価が可能であった。以上より、我々が作成した鎮静プロトコルは、救急患者に対しても適切に鎮静管理を行うことが可能と考え、今後更なる実用性の評価が必要である。
【参考文献】
1)酒井敬子、小林孝子、他.当院救命ICUにおける人工呼吸患者に対する看護師遂行型鎮痛・鎮静プロトコル導入の試み.日救急医会関東誌.2013;34(2):388-391
2)鶴薗奈央他.人工呼吸器管理中患者への鎮静鎮痛プロトコル導入に関するせん妄発症予防の検討.日救急医会関東誌.2014;35(2):211-213
救急患者の搬入理由は内因・外因問わず幅広く、中枢神経障害を合併する頻度も高いため、鎮静鎮痛管理におけるプロトコルの実践は困難なことが多い。本研究の目的は、救急患者に対する鎮静プロトコルを作成・導入し、それに基づき鎮静鎮痛レベルの目標値を設定し、医師・看護師が統一した視点と手順で鎮静鎮痛管理が可能かを検討することである。
Ⅱ.方法
研究対象:当院高度救命救急センターに入院した43~81歳の男女5名の患者。疾患はCO中毒、髄膜炎、心不全、外傷(小児、中枢神経疾患、精神科疾患、認知症、中毒を除外した)。 研究期間:平成30年3月21日~8月20日 研究方法:患者5名を対象に、当院で作成した「鎮静プロトコル」に従い鎮静管理を行った。プロトコルでの薬剤管理方法は、デクスメデトミジンを0.4(μg/kg/hr)で投与し、それに加えミダゾラムまたはプロポフォールのいずれかを併用した。投与開始量、最小~最大投与量、一回増減量を医師が指示し、看護師が状態に応じて薬剤量を調整する内容とした。このプロトコルを用いて鎮静管理を行い、2時間毎またはイベント発生時のCPOT、RASSの評価と薬剤量を記録した。さらに、睡眠状況や疼痛の有無などの聞き取り調査を行った。これらの調査は、病棟入室時と流量変更時、全身観察と意識レベル確認を行う時間帯に行った。 倫理的配慮:倫理委員会の承認後、高度救命救急センター看護記録や診療記録からデータ収集を行った。同意書により研究の同意を得、関連資料は厳重に保管した。
Ⅲ.結果
3症例でプロトコル開始48時間以降の鎮静剤流量の変更なし、又は変更回数が減少し、RASS-3~+1の目標範囲にコントロールできた。さらにCPOTは48時間を境に0~5から0~3に低下した。他1例は開始24時間以内に鎮静を中止し、短時間でプロトコルが終了した。残りの1例は鎮静、鎮痛ともに全ての期間でコントロール不良であった。また、鎮静コントロール中に血圧低下したため、鎮静剤をプロトコル指示外で2回減量した症例があった。対象のうち4例で疼痛の有無と部位、睡眠状況を聞き取ることができた。1例は浅鎮静であったが聞き取りができなかった。全症例でプロトコル管理中に自己抜管等の重大インシデントの発生はなかった。
Ⅳ.考察
我々が作成した鎮静プロトコルを救急患者に導入したが、おおむね鎮静開始後48時間までには目標とする鎮静レベルにコントロールすることができた。鎮静、鎮痛ともに全ての期間でコントロールが不良例は、聞き取り調査を行った全ての時間帯で「痛みがある」 と答えており、鎮痛対策が不十分であったことが鎮静不良の原因と考えられた。また、持続鎮痛鎮静管理においては、ガイドラインに基づき鎮静剤の定期的な一時中断が必要と考えられた。
プロトコル管理中に重大インシデントの発生はなく、救急患者に対しても十分な疼痛コントロールで浅い鎮静管理が可能と考えられた。また、浅鎮静の症例ではNRSで評価が可能であり、より主観的な痛みの評価が可能であった。以上より、我々が作成した鎮静プロトコルは、救急患者に対しても適切に鎮静管理を行うことが可能と考え、今後更なる実用性の評価が必要である。
【参考文献】
1)酒井敬子、小林孝子、他.当院救命ICUにおける人工呼吸患者に対する看護師遂行型鎮痛・鎮静プロトコル導入の試み.日救急医会関東誌.2013;34(2):388-391
2)鶴薗奈央他.人工呼吸器管理中患者への鎮静鎮痛プロトコル導入に関するせん妄発症予防の検討.日救急医会関東誌.2014;35(2):211-213