第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

重症患者看護

[O11] O11群 重症患者看護①

Fri. Oct 4, 2019 10:30 AM - 11:10 AM 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:戸部 理絵(信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター)

[O11-2] 鎮静患者における疼痛評価スケール導入への取り組み

藤沼 友子 (獨協医科大学埼玉医療センター)

Ⅰ.目的
今日、鎮静だけでなく適切な疼痛評価と鎮痛の必要性が提言され、鎮静患者の疼痛管理は優先すべき重要な看護ケアである。A病院では、鎮静患者の疼痛評価の方法が統一されていなかった。鎮静患者の適切な疼痛評価と鎮痛につなげるために、鎮静患者の疼痛に関するICU看護師の意識や行動調査結果をもとに、疼痛評価スケールを導入した。
Ⅱ.方法
・記録調査(平成30年7月26日~8月27日):RASS-2~-5の鎮静患者(以降鎮静患者)のうち意識障害を除く22名で、疼痛評価と疼痛緩和を行った看護記録の有無を調査した。
・アンケート(平成30年8月1日~8月20日):鎮静患者の看護経験が半年以上のICU看護師20名に、鎮静患者における疼痛管理についてアンケートを実施した。
・記録調査とアンケート結果からICUの現状と課題をスタッフへ提示し、鎮静患者の疼痛管理に関する資料配布と疼痛評価方法の動画学習を行った。動画はスタッフがいつでも確認できるようにした。ベッドサイドに疼痛評価方法を明示した。
・新人看護師に対し、鎮静患者の疼痛管理の必要性について集合教育を行った。
・記録調査とアンケートは、A病院倫理審査委員会の承認を得て実施した。
Ⅲ.結果
アンケートと記録調査からみえた現状と課題について、スタッフへ提示した上で疼痛評価スケールの導入を行うことができた。また、資料配布と動画学習により、スタッフ個人のタイミングで、繰り返し学習を行う環境を提供できた。疼痛評価スケールの導入後、鎮静患者に対し疼痛評価をもとに疼痛緩和を図る記録が残されるようになった。
Ⅳ.考察
疼痛評価スケール導入にあたり、新しい行動への「やらされ感」をなくし、スタッフ自ら行動に移すきっかけが必要と考えた。レヴィンの組織変革の特徴によれば、「解凍」の時期では組織がこれまでの認識や行動から脱却し、新しい認識や行動の必要性に理解を得なくてはならない時期とされる。記録調査及びアンケート結果に基づいて、組織の現状と課題をスタッフに提示し、行動の必要性を明確にしたことで、変化への動機づけに繋がったと考える。また、資料配布と動画学習について、視覚的学習は現象がイメージしやすく学習意欲を促し、繰り返し視聴することで効果的に習得できるといった利点が明らかとなっており、効果的な学習になったと考える。そして、スタッフ個人のタイミングで繰り返し学習できる環境を提供することで、「学習しやすさ」に繋がったと考える。また、状況対応リーダーシップによれば、影響の対象となる個人または集団のレディネスのレベルに合わせるべきとしている。経験年数が幅広く存在する組織に対し、一律に資料配布と動画学習による個人学習を行うことは、個人のレディネスに応じていないと考えられる。学習経験を持ったスタッフとは別に、新人看護師に教育の場を設けたことは、組織の中での個別のレディネスに応じた有効な教授方法であったと考える。レヴィンによれば「変化」の時期は、新しい知識や行動を導入する時期とされる。鎮静患者の疼痛評価をもとに疼痛緩和を図る記録が残されるようになり、行動変容の段階となった。P.ハーシイは、行動変化は「知識」「態度」「個人行動」「集団行動」4つのレベルがあり、「知識」に比べ「態度」に対する行動変容はより難しいとしている。レヴィンも、「変化」は推進力と抑止力が働く時期としており、新しい知識や方法に対し、これまでの行動への否定感や混乱を生じ、抑止力に繋がることが考えられる。今後は変化に伴う課題を整理しながら、「態度」「個人行動」「集団行動」へつなげていくことが課題である。