第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

重症患者看護

[O11] O11群 重症患者看護①

2019年10月4日(金) 10:30 〜 11:10 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:戸部 理絵(信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター)

[O11-3] 口腔ケアにおける口腔用ウェットティッシュの有用性

河本 翼1, 小川 美緑2, 田戸 朝美3, 松山 美依奈1, 山勢 博彰3, 山本 小奈実3, 佐伯 京子3 (1.前山口大学医学部保健学科, 2.福岡大学病院看護部, 3.山口大学大学院医学系研究科)

Ⅰ.はじめに:人工呼吸器関連肺炎を予防するには、口腔内の細菌の増殖を抑える口腔ケアが重要であり、注水の代わりに保湿ジェルやウェットティッシュが注目されている。
Ⅱ.目的:口腔ケア用ウェットティッシュによるふき取りが、口腔内細菌の除去を短時間で可能とするかを明らかにする。
Ⅲ.研究方法
1.研究デザイン:健常人を対象としたRCT(Randomized Controlled Trial)のクロスオーバーデザイン
2.研究期間:平成30年10月17日~25日
3.研究対象者:研究者の所属する大学に在籍する学生で20歳代の16名
4.方法:研究対象者に対し、2日間の期間、朝食・歯磨き前に異なる2つの口腔ケアを実施した。ブラッシングまではニプロ社製口腔ケアキットを用いて同様の方法で行い、ブラッシング後に①口腔ケア用ウェットティッシュ(以下ウエッティ)と②スポンジブラシ(以下スワブ)のいずれかで拭き取る方法とした。
5.測定項目:①細菌数:口腔ケアの前後及びブラッシング後の3点で、舌を綿棒で擦過し細菌カウンターにて測定した。②ATP(adenosine triphosphate)値:細菌数測定の溶液中にATP測定試薬を攪拌して測定した。③染色率:口腔ケア前後に、歯垢染色液で前歯を染色したものを撮影後画像化し、画像解析ソフトにて数値化した。④拭き取り時間及び回数:ふき取り開始から終了までの時間と回数を測定した。
6.分析方法:細菌数、ATP値、染色率の統計解析は介入方法の違いを二元配置分散分析とWilcoxonのT検定で行った。
Ⅳ.倫理的配慮:対象者には文書をもって説明し同意を得た。その際成績等には影響せず自由意志であることを説明した。倫理審査委員会の承認を得た。
Ⅴ.結果
細菌数の変化:ウェッティによる細菌数は、口腔ケア前:4.6×10(以下全て×106)、ブラッシング後4.8、口腔ケア後2.4、スワブでは、口腔ケア前4.0、ブラッシング後4.6、口腔ケア後5.5であり、有意な交互作用が認められた(p<0.05)。拭き取り後はウェッティで有意に少なかった(p<0.05)。 口腔内のATPの変化:ウェッティによるATP値は、口腔ケア前:27.3×103(以下全て×103)、ブラッシング後31.5、口腔ケア後15.9、スワブで口腔ケア前22.9、ブラッシング後32.3、口腔ケア後35.0であり、有意な交互作用が認められた(p<0.05)。 拭き取り後はウェッティで有意に少なかった(p<0.05)。 染色率:ウェッティによる染色率は、口腔ケア前後で53.5%、7.5%であった。スワブは50%、9%であった。2群に有意な交互作用は見られなかった。 拭き取り時間及び回数:ウェッティは、平均6 5.4秒、スワブは79.2秒で、回数は、ウェッティは13.5回、スワブは17.5回で、ウェッティが有意に少なかった(p<0.05)。
Ⅵ.考察
口腔ケア後の細菌数とATPの値は、ウェッティの方がスワブよりも減少していた。また、ウェッティのほうが拭き取り時間が短く、回数が少なかった。これは、ウェッティはスワブよりも表面積が広いため、口腔内を効率的に拭き取ることができ、それに伴い拭き取り回数及び時間の減少につながったと考えられる。また、染色率においては両者に違いはなかったことから、時間と回数が短くなっても、歯垢除去の程度に差はないといえる。以上のことより、ウェッティは口腔内の汚染物除去を効率的に行え、気管挿管患者など脆弱な状態にある患者への安全な口腔ケア方法として有用である可能性がある。