第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O17] O17群 看護教育③

2019年10月5日(土) 09:00 〜 09:50 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:藤井 美幸(国立国際医療研究センター病院)

[O17-2] 訪問看護師を対象にした患者急性症状の初期対応セミナーの研修設計

與賀田 洋1, 増山 純二2, 張岳 輝子3, 宮田 佳之3, 本田 智治3, 岸川 貴司4, 石井 美保子5, 山口 和美6 (1.医療法人 伴帥会 愛野記念病院 看護部, 2.長崎みなとメディカルセンター 救急部, 3.長崎大学病院 看護部, 4.長崎医療センター 看護部, 5.長崎みなとメディカルセンター 看護部, 6.川棚医療センター 看護部)

1.はじめに
 日本は全国の救急車搬送の60%以上が高齢者の搬送となっている。在宅で医療行為が可能である患者の搬送も少なくはない。しかし、判断を間違えると重症度が高くなるのも高齢者救急の特徴である。地域で在宅を基本とした生活の継続を目指す地域包括ケアシステムの構築を図るためにも、重症度が高くなる前に病院受診を促し、かつ、救急車を呼ぶなどの緊急度の判断ができる訪問看護師が必要とされた。そこで、A県救急看護認定看護師会では、訪問看護師を対象に「患者急変の前兆に気付く」をテーマにセミナーを実施した。
2.目的:訪問看護師を対象にした「患者急変の前兆に気付く」セミナー設計について検討する。
3.セミナー内容
1)対象/研修時間:訪問看護師/4時間
2)目標:迅速評価ができる/一次評価が出来る/緊急度の判断ができる/SBAR報告ができる
3)研修方法:講義、シミュレーション教育
4.研究方法:研究期間は平成31年4月、研究対象はセミナーを受講した訪問看護師とし、研修終了数ヶ月後に、質問紙を用い「迅速評価」「一次評価」「二次評価」「緊急度判定」「SBAR報告」の在宅医療現場での活用状況を調査した。その上で、セミナーの設計について、ADDIEモデルをもとに「分析」「設計」の工程を評価する。
6.倫理的配慮:A病院倫理委員会にて承認を得た。
7.結果:20名に質問紙を送付し、11名(回収率55%)から回答を得た。看護師経験年数は11名全員が10年以上、急変対応の経験も11名全員経験があった。セミナー終了後の急変経験は6名(54.6%)であった。セミナーの学習内容の活用について、「活用できている」「まあまあ活用できている」の割合は、「迅速評価」90%,「一次評価」54%,「二次評価」55%,「緊急度判定」72%,「SBAR報告」55%であった。
7.考察
1)分析
 訪問看護師を対象にした「患者急変の前兆に気付く」のセミナーは、病院内でのセミナーを応用して実践した。訪問看護師の場合は、患者急変対応ではなく、急性症状に対して急変しているかを判断、つまり、緊急度を判断することが重要であり、その概念を浸透させていく必要がある。今回のセミナーでは、救急車適応の患者の見極めを中心に、セミナー設計を行った。今後は、訪問看護師によるトリアージとして、プロトコールを作成していき、多くのシチュエーションの中で判断できるセミナーを構築していく必要がある。
2)設計
 研修時間、研修目標については、研修時間を踏まえると研修目標は妥当であると考える。しかし、研修内容に二次評価を講義やシナリオの中に入れている点については、研修目標と研修内容の整合性が図れていなかった。アンケートの結果、研修内容に二次評価を入れていることもあり、半数が活用していると答えている。しかし、一次評価の活用度は低く、その中での緊急度の判断の妥当性については不安が残る。そのため、迅速評価、一次評価に焦点を当て確実に目標達成をさせる必要がある。研修方法としては、訪問看護師は経験値は高く、患者の異常を気付くことができるが、それを言語化することが課題であるため、シミュレーション教育でのセミナー設計は妥当であったと考える。
8.結論
「患者急変対応」ではなく、「患者急性症状の初期対応」とし、訪問看護師を対象にしたトリアージのプロトコールを作成した上で、トリアージの概念を中心にセミナーを設計する。研修内容は、迅速評価、一次評価に焦点をあて確実に救急車の適応を見極めることを目的に、シミュレーション教育を取り入れたセミナーを設計する。