第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O18] O18群 看護教育④

2019年10月5日(土) 10:00 〜 11:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:山中 聖美(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)

[O18-4] 高度救命救急センターに配置転換した看護師の支援に対する実態調査

東 寛華, 小宮 加奈子, 今泉 香織, 松藤 彩, 宮崎 恵美子 (佐賀大学附属病院高度救命救急センター)

【はじめに】
 看護師は人材育成や処遇・適材適所、組織の活性化、モチベーションの維持・向上、雇用調整目的とした配置転換(以下異動)を余儀なくされる。A病院高度救命救急センター(以下ECU)では1年間を通して、様々な時期に看護師が異動してくる。異動した看護師(以下異動者)の経験した年数や領域は多岐にわたり、新人教育のように一律での支援体制がない。現在は、異動者の人数や経験に応じて個別または全体の支援担当者を設定している。また、業務や処置に関しては、ECUで使用するマニュアルを活用している。しかし、これらの支援体制について十分に検討できていない。
 そのため、これまでの支援の実態や希望する支援内容について実態調査を行い、必要とされる支援について検討する。
【方法】
対象:ECUに勤務する異動者15名
調査方法:先行研究をもとに作成した無記名自記式質問紙による意識調査
調査項目:①基本属性(看護師経験年数、ECU勤務年数、異動時看護師経験年数、経験病棟、配置転換の希望の有無)、②配置転換後の支援体制・状況(マニュアルの有無、指導看護師の有無、未経験技術の付き添い指導の有無、支えになった支援の有無・内容)③今後必要だと考える異動者への支援
分析方法:記述統計
【倫理的配慮】
 A病院看護部看護研究倫理審査会の承認を得た。得られた情報は個人が特定されないように配慮し、回収したアンケート用紙や電子媒体による記録、調査データを保存するUSBメモリの取り扱いは厳重に管理した。
【結果】
 ECUに勤務する異動者15名に質問紙を配布し、13名から回答を得た(回収率86.6%)。異動時の経験年数は1~24年目であり、初回の異動経験者は10名(77%)、ECUへの異動希望者は9名(69%)であった。
 異動者の支援体制として、マニュアルや個別支援担当者の存在が6名(46%)であり、全て異動後1~3年目であった。異動後7年目以上の看護師は、マニュアルや専属指導がなかった。その他の支援体制として、未経験処置への付き添いが8名(62%)であった。支えになった支援体制は個別支援担当者の存在が5名(38%)、未経験の項目の説明が3名(38%)であった。異動者のストレスとして、相談相手の不在・相談のしづらさが4名(30%)、異動前との業務の違いが3名(23%)、初めての処置が2名(15%)であった。
 異動者が今後の異動者に必要と考えている支援としては、個別支援担当者の存在が11名(84%)、全体支援担当者の存在が5名(38%)であった。
【考察】
 看護師にとって異動は、表面上、提供される看護実践が初心者への逆戻りの経験となり、新しい環境への適応に課題が生じると言われている。ECUでは様々な年代や性別、疾患の重症患者に対応するために、病態や治療の知識を深めていく必要がある。異動者もその経験年数や領域など背景が様々であり、必要とする支援は同じではない。その中でも、異動者に共通する課題は、人間関係の構築や、ECUでの知識や経験の不足であった。
 今回、異動者に必要な支援として、個別支援担当者の存在があがった。個別支援担当者が存在することで、まずは個々の異動者の相談相手としての役割、さらにECUでの人間関係の構築の窓口となることが期待される。また、それぞれの異動者のレディネスを把握し、必要な学習の援助や指導者としての役割を期待することもできると考えられる。
 また、個別支援を行う際にマニュアルを使用することで、標準化した看護の提供が期待できる。
 以上よりマニュアルを活用した個別支援が今後の異動者支援体制に必要であることが示唆された。