第21回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

看護教育

[O18] O18群 看護教育④

Sat. Oct 5, 2019 10:00 AM - 11:00 AM 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:山中 聖美(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)

[O18-5] 救命救急センターの救急外来実習における看護学生の体験

本田 智治1, 大山 祐介2, 橋爪 可織2, 松浦 江美2, 永田 明2 (1.長崎大学病院 高度救命救急センター, 2.長崎大学 生命医科学域保健学系)

【目的】

救命救急センターの救急外来における実習の学びの語りから,看護学生の体験を理解することである.

【方法】

研究デザインはSandelowskiが論ずる質的記述的研究である.2018年6月から8月の期間で,A大学の成人看護学実習Ⅱにおいて,救命救急センターの救急外来で実習を修了した看護学生を対象に,半構造的面接を行った.1回のインタビュー時間は平均57.6分(45~70分)であった.インタビューでは,看護学生の実習体験による変化を調査するため,①実習中の体験について,②実習指導者および教員について,③実習前後の救急看護のイメージについてを問い,自由に語ってもらった.インタビューで得られたデータから逐語録を作成した.その後,研究目的の内容を示す語りの文節を取り出しコードとした.取り出したコードを共通点と相違点を考慮してカテゴリ―を作成した.カテゴリ―に含まれる学生の語りの文節を救命救急センターの救急外来における学生の体験の特徴を考慮してカテゴリー名を付けた.本研究は,A大学の倫理委員会の承認を得て実施した(許可番号18041221).



【結果】

研究参加者は6人であった.分析の結果,学生の救急外来での実習に関わる体験を示すコードから14個のサブカテゴリ―を抽出し,4個のカテゴリ―が抽出された.以下カテゴリ―を【 】で示す.

救急外来実習を希望する学生は,ドラマなどによって,多忙で殺伐としている救急医療現場のイメージを抱いて実習に臨んでいた.実習が開始となり,はじめて救急外来の環境をみて,綺麗,静か,開放的という意外さを知るとともに,医師と看護師が話し合いながら救急患者へ対応する場面や,一刻を争う重症患者以外の救急対応することを初めて知り,【メディアで形成された希薄な救急医療のイメージが実習によって具体的なイメージへと移行する】という変化が生じていた.さらに,救急看護は医師からの指示に従い実践するだけのイメージを抱いていたが,救急看護実践や救急患者への寝衣交換や排泄援助などの看護ケアの体験を通じて,【救急外来でも病棟と変わらない自分が学んだ看護ケアが存在することに気づく】ことができていた.また,学生は,生死の境目にいる患者に対する侵襲的な処置が行われる場面に衝撃を受け,戸惑い悲しむ患者の家族に共鳴しており,【救急医療における医療者・患者・家族の姿から,医療現場の現実を知る】ことに繋がっていた.その中で,実習指導者が救急看護認定看護師であることによって,学生は安心して実習に臨めていた.同時に,緊迫した状況の中で豊富な知識と経験をもとに,率先して看護を行っていく実習指導者の姿をみて凄さを実感し憧れの気持ちを抱いていた.そして,救急看護にやりがいを感じ,救急の分野で働きたいという新たな目標を掲げるなど,【救急外来の看護師の姿を通じて自分の将来における選択肢の幅が広がる】ことに繋がっていった.

【考察】

 救急外来における看護学実習に参加することで,学内だけではイメージしにくい救急看護を身近に感じ,専門的看護の基盤にある基本的な看護の存在に気づくことに繋がった.また,メディアだけでは知ることができないリアルな救急医療を体験できたことにより,希薄なイメージから具体的なものへ変化が生じていた.そしてさらに,救急看護認定看護師がロールモデルとなり看護実践を行う姿を目の当たりにしたことや,また,指導者として学生の存在を受け入れつつ実習に臨める環境をつくったことが,学生が救急看護領域の看護師を目指す動機づけを生じさせ,将来の看護師像をイメージ化する事に繋がったと考えた.