第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

トリアージ

[O20] O20群 トリアージ②

Sat. Oct 5, 2019 9:00 AM - 10:00 AM 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:中嶋 康広(東海大学 看護師キャリア支援センター)

[O20-6] 救急外来を独歩受診した患者の呼吸数測定の必要性について

松本 真菜, 斎藤 祐世, 境 風香, 真田 滋可, 髙橋 志保, 淵岡 有沙 (上尾中央総合病院)

Ⅰ.はじめに A病院では2017年6月よりJTASを導入したが、呼吸数を測定されていない現状がある。呼吸数を測定しないことでアンダートリアージ(以下UT)となることが考えられ、呼吸数測定の有無がトリアージに与える影響について研究を行った。
Ⅱ.研究目的 UTと判断されると、診察や治療開始が遅れ、患者の予後への影響が予測される。そのため、呼吸数測定の必要性を再認識し、UT減少に繋がることを目的とした。
Ⅲ.研究方法 1.研究対象者:A病院救急外来を独歩受診した入院患者2017年100名、2018年100名。看護師32名。2.調査期間:2017年10月~2018年11月。3.調査方法:トリアージ内容を救急看護認定看護師がカルテ上で検証。2018年9月に勉強会で呼吸数測定の現状と必要性を周知後、呼吸数測定に関するアンケート(4項目)を実施(2件法と自由記載)。勉強会前後の入院患者100名ずつ抽出し、UT率、呼吸数測定の有無を比較。4.分析方法:単純集計
Ⅳ.倫理的配慮 A病院倫理委員会で承認を得た。(承認番号:593)看護師の研究参加は自由意思である。利益相反はなし。
Ⅴ.結果 2017年呼吸数未測定76%(76/100人)、UT率20%(20/100人)、呼吸数未測定かつUT率80%(16/20人)。2018年呼吸数未測定30%(30/100人)、UT率23%(23/100人)、呼吸数未測定かつUT率30%(7/23人)。アンケート結果では、「呼吸数測定の必要性を感じない」「範囲の小さな外傷や、帰宅となりそうな患者には測定しない」「顔色を見て重症ではないと判断し測定しない」「患者が多く多忙」などの意見が挙がった。
Ⅵ.考察 勉強会実施後もUT率に大きな変化はなかった。UTと判断された症例の多くは全身状態に異常があり、SIRS基準に該当する若年者の発熱や、疼痛スケールの評価がUTとなっていた。看護師の主観的判断でトリアージされていたことが考えられる。又、問診票のトリアージ記載欄には、具体的な呼吸数の表記が無く、呼吸数を測定する認識に欠けていることが考えられる。JTASに関する研修を、個人で受講しているが、看護師のトリアージに関する認識には差異がある。JTASによるトリアージ方法の認識不足がUTに繋がったのではないかと考える。西塔らは、「単なる印象だけで軽症と判断するのではなく、全ての患者の自覚症状、他覚的所見ならびに現病歴に関する情報を集め、批判的思考の元に判断する事が重要である。」1)と述べている。トリアージは呼吸数のみに着目するのではなく、全身状態を観察し、多くの情報を得ることが必要である。また、医師や他職種でトリアージの症例検討会を実施し、情報共有することでUT減少に繋がると考える。アンケート結果より、患者の病歴や第一印象で呼吸数測定の必要性を判断している意見が多数あった。日々の看護の中でも患者の呼吸異常に気付き、その後急変に直面する事もある。これらの症例や、呼吸数測定をされていない現状を周知したことは、呼吸の重要性を再認識する機会になったと考える。
Ⅶ.結論 本研究では、勉強会実施後に呼吸数測定された患者数は増加した。しかし、未だに全例に呼吸数測定がされていない。トリアージは、全身状態を観察し情報を得る事が必要であり、呼吸はトリアージを行う上で重要なプロセスの1つである。多忙な時こそ、緊急性の高い患者に対する適切なトリアージが必要であり、トリアージを実施する看護師として、個々のトリアージ能力の向上が必要であると感じた。