[O24-6] ECPRマニュアル導入によるDoor to ECMO及び再灌流時間短縮を目指した取り組み
【はじめに】
院外心停止症例における体外循環式心肺蘇生法(ECPR)は,心肺蘇生法時間が短いほど予後が改善する可能性があり,低体温療法,経皮的冠動脈形成術との早期併用が効果的である。ECPRは,心停止発症から1時間以内に行うことが望ましいとされている。しかし,ECPRに関する適応基準や方法はガイドラインで明確化されておらず,各施設の判断に任されている。
A病院でも整備されたマニュアルはなく,現場の判断,医師の経験や知識に委ねられており,再灌流までに要した時間の要因が明らかではなかった。そこで,ECPRに携わる多職種チームを立ち上げ,迅速で安全かつ確実なECPRが行えるようマニュアルを作成・導入し,時間短縮とその要因を明らかにするために取り組んだ。
【目的】
ECPRマニュアルを導入したことでECMO駆動などの時間短縮ができたかを前後比較し,その要因を明らかにする。
【方法】
対象:院外心停止症例でECPRを施行した症例のうち,血管造影室へ出棟した心原性心停止患者。2017年6月~2018年3月をマニュアル導入前(A群),2018年6月~2019年3月をマニュアル導入後(B群)。
調査方法:基本属性(年齢,性別,目撃者の有無,bystander CPRの有無,転帰など)及び各行程に要した時間とその要因について診療録,看護記録より後方視的に調査した。各行程は,①病院到着~シース挿入,②シース挿入~ECMO駆動,③ECMO駆動~血管造影室出棟,④病院到着~ECMO駆動,⑤病院到着~血管造影室出棟,⑥病院到着~再灌流とし比較検討を行った。
分析方法:統計解析はSPSS ver20を使用し,基本属性はχ二乗検定を用いた。①~⑤の各行程時間の比較はt検定,マン・ホイットニーのU検定を用い,有意水準はp<.05とした。⑥は単純集計を比較した。
【倫理的配慮】
A病院倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
対象症例は,A群8例,B群14例,そのうち再還流を施行した症例はA群4例,B群12例あった。基本属性に有意差はなかった。各行程時間は,①[A群8.5(4.5-10.8)分vs.B群9.0(6.8-12.8)分,p=.271],②[A群16.0(11.0-39.3)分vs.B群15.0(11.0-19.8)分,p=.656],③[A群46.1±5.5分vs.B群42.4±5.1分,p=.649],④[A群24.0(15.8-47.5)分vs.B群23.5(23.0-35.3)分,p=.783],⑤[A群73.5±7.0分vs.B群66.9±5.9分,p=.491],⑥A群100.8±9.8分、B群99.8±5.4分とほぼ同じであった。①以外の行程で時間短縮を認めたが有意差はなかった。診療録,看護記録よりCT撮影[A群50%vs.B群64%],Aライン挿入[A群50%vs.B群50%],CV挿入[A群50%vs.B群43%]などマニュアル以外の手技が抽出された。
【考察】
マニュアル導入前後で有意差は認められなかったが,その要因としてマニュアル以外の手技を半数以上で行っており,ECMO駆動困難症例に対する見極めが難しかったことが考えられる。大きな時間短縮は得られておらず,マニュアル改善の余地がある。特にCT撮影に時間を要したが,大動脈解離や脳出血否定目的のため必要であり,ECMO駆動下での移送方法など検討を要する。今後も,マニュアルを改訂しながら医師やコメディカルと連携しつつ,ECPR時間と再灌流時間の短縮を図り,患者の脳蘇生予後に寄与できるよう活動を行っていきたい。
院外心停止症例における体外循環式心肺蘇生法(ECPR)は,心肺蘇生法時間が短いほど予後が改善する可能性があり,低体温療法,経皮的冠動脈形成術との早期併用が効果的である。ECPRは,心停止発症から1時間以内に行うことが望ましいとされている。しかし,ECPRに関する適応基準や方法はガイドラインで明確化されておらず,各施設の判断に任されている。
A病院でも整備されたマニュアルはなく,現場の判断,医師の経験や知識に委ねられており,再灌流までに要した時間の要因が明らかではなかった。そこで,ECPRに携わる多職種チームを立ち上げ,迅速で安全かつ確実なECPRが行えるようマニュアルを作成・導入し,時間短縮とその要因を明らかにするために取り組んだ。
【目的】
ECPRマニュアルを導入したことでECMO駆動などの時間短縮ができたかを前後比較し,その要因を明らかにする。
【方法】
対象:院外心停止症例でECPRを施行した症例のうち,血管造影室へ出棟した心原性心停止患者。2017年6月~2018年3月をマニュアル導入前(A群),2018年6月~2019年3月をマニュアル導入後(B群)。
調査方法:基本属性(年齢,性別,目撃者の有無,bystander CPRの有無,転帰など)及び各行程に要した時間とその要因について診療録,看護記録より後方視的に調査した。各行程は,①病院到着~シース挿入,②シース挿入~ECMO駆動,③ECMO駆動~血管造影室出棟,④病院到着~ECMO駆動,⑤病院到着~血管造影室出棟,⑥病院到着~再灌流とし比較検討を行った。
分析方法:統計解析はSPSS ver20を使用し,基本属性はχ二乗検定を用いた。①~⑤の各行程時間の比較はt検定,マン・ホイットニーのU検定を用い,有意水準はp<.05とした。⑥は単純集計を比較した。
【倫理的配慮】
A病院倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
対象症例は,A群8例,B群14例,そのうち再還流を施行した症例はA群4例,B群12例あった。基本属性に有意差はなかった。各行程時間は,①[A群8.5(4.5-10.8)分vs.B群9.0(6.8-12.8)分,p=.271],②[A群16.0(11.0-39.3)分vs.B群15.0(11.0-19.8)分,p=.656],③[A群46.1±5.5分vs.B群42.4±5.1分,p=.649],④[A群24.0(15.8-47.5)分vs.B群23.5(23.0-35.3)分,p=.783],⑤[A群73.5±7.0分vs.B群66.9±5.9分,p=.491],⑥A群100.8±9.8分、B群99.8±5.4分とほぼ同じであった。①以外の行程で時間短縮を認めたが有意差はなかった。診療録,看護記録よりCT撮影[A群50%vs.B群64%],Aライン挿入[A群50%vs.B群50%],CV挿入[A群50%vs.B群43%]などマニュアル以外の手技が抽出された。
【考察】
マニュアル導入前後で有意差は認められなかったが,その要因としてマニュアル以外の手技を半数以上で行っており,ECMO駆動困難症例に対する見極めが難しかったことが考えられる。大きな時間短縮は得られておらず,マニュアル改善の余地がある。特にCT撮影に時間を要したが,大動脈解離や脳出血否定目的のため必要であり,ECMO駆動下での移送方法など検討を要する。今後も,マニュアルを改訂しながら医師やコメディカルと連携しつつ,ECPR時間と再灌流時間の短縮を図り,患者の脳蘇生予後に寄与できるよう活動を行っていきたい。