第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護体制

[O26] O26群 看護体制

2019年10月5日(土) 09:00 〜 09:50 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:合原 則隆(久留米大学病院 高度救命救急センター)

[O26-4] 独歩で救急外来を受診する患者・家族の待ち時間における看護師の関わりの実態調査

田口 育美, 北本 千春, 加藤 智子 (聖隷浜松病院ER)

【はじめに】ER受診患者数は年々増加し、患者のケア度も高く、待ち時間への対応は複雑化している。患者・家族の主観的な「待たされ感」が増大しやすい環境であるため、個々の看護師の患者・家族への関わりが、待ち時間における感情の変動に影響している様相がみられている。そこで、看護師が待ち時間を過ごす患者・家族に対する関わりを実態調査することで、現状を把握し、質の高い看護実践と患者満足度の向上に繋がると考え調査に取り組んだ。

【目的】ERを受診する患者・家族を対象に、看護師が行なっている待ち時間の関わりの現状を明らかにし、今後の課題を見い出す。

【方法】研究デザイン:量的研究、対象:A病院のERで業務する看護師49名(ER看護師16名、血管造影室看護師9名、外来看護師24名)、期間:2018年7月〜2018年8月、収集方法:無記名式質問紙を配布し、留め置き調査で実施した。質問項目は、先行研究を参考に、「情緒支援」「患者の安楽・安寧」「環境調整」「家族の患者ケアへの参加」「情報提供」「信頼関係構築」「チーム調整」に関する看護実践について独自に作成した。分析方法:質問項目とカテゴリーごとに単純集計した。倫理的配慮:A病院の院内臨床研究審査委員会の承認を得た。

【結果】質問紙の回収率63%、臨床経験の平均年数16.9年、ER経験の平均年数6.0年であった。各カテゴリーにおいて、「実施している」「ほぼ実施している」と答えた看護師は、「情緒支援」86%、「患者の安楽・安寧」74%、「環境調整」66%、「家族の患者ケアへの参加」68%、「情報提供」70%、「信頼関係構築」70%に対して、「チーム調整」は45%であった。所属部署間での差が比較的大きかった項目は、「患者の安楽・安寧」「環境調整」「情報提供」「チーム調整」であった。その中で、「チーム調整」は、ER看護師でER経験年数が6年目以上の看護師は79%と示され、高い傾向にあった。「情報提供」における質問項目「看護師の観察や判断に対する根拠の説明」では、「実施している」「ほぼ実施している」と答えた看護師は、全体の26%と少なかった。またER看護師においても36%であり、50%未満の結果はこの質問のみであった。

【考察】「患者の安楽・安寧」「環境調整」「情報提供」「チーム調整」における所属部署間の意識の違いは、ERの専門的知識の不足や関係性の少ない他部門との連携など、個人で判断することの困難感と考える。また、待合室で待機している患者に、一人の看護師が継続して関わることは少なく、看護師がもつ情報をチームとして共有しにくい環境の可能性がある。リーダーシップを発揮できるER看護師が、率先して情報集約を図り、効率的な情報共有と役割分担の調整を担うことで、患者・家族に対するチームの対応能力を向上させる必要がある。また「看護師の観察や判断に対する根拠の説明」など患者の身体状況に合わせた看護判断の説明をしている看護師は少なかった。個別性に合わせ、適宜、看護判断や看護行為を具体的に説明することは、患者・家族のニーズに合わせた安楽と精神的安寧の保持に繋がると考える。以上より、重症度が低く、関わる頻度が少ない患者・家族に対しても、情報を把握し継続して関わるために、全ての看護師が、情報共有と個々の患者に対する関わりを意識的に行うこと、看護師全員が共通した知識を持つための教育と他職種連携を深めることが、今後の課題である。これらの取り組みは、患者・家族が待つことで生じる苦痛を最小限にでき、安心した待機時間となることで、患者満足度の向上へ繋がると考える。