第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

トリアージ

[O29] O29群 トリアージ③

2019年10月5日(土) 13:30 〜 14:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:田中 浩(東京都立広尾病院 看護部 救命救急センター)

[O29-5] 大学病院に通院している患者からの電話トリアージの困難感を減らせる対応と今後の在り方の検討

矢部 友理, 谷島 雅子 (自治医科大学附属病院)

【はじめに】A大学病院は、2015年11月より時間外に救急外来を受診希望する患者に対して、看護師による電話トリアージが開始となった。先行研究では電話トリアージは、患者を視覚で捉えないため判断が難しく、緊急度や重症度の判別が難しいと述べられている。A大学病院は、特定機能病院であり受診希望で電話連絡をしてきた90%以上が、かかりつけ患者である。そのため、経験の浅いスタッフは受診希望の判断に難しさを感じ対応に不安を抱いている。そこで、A大学病院に通院している複数の疾患を抱える患者からの電話トリアージの困難感を明らかにし、今後のトリアージの在り方を検討する必要があり研究に取り組むことにした。

【目的】複数の疾患を抱え、大学病院に通院している患者からの受診の相談に対して、電話トリアージの困難感を明らかにする。

【方法】インタビューガイドを用いて半構成的面接を行った。対象者は、電話トリアージ導入当時から関わっている承諾を得られた看護師5名であり、データ収集期間は2018年6月から2018年9月であった。分析方法は、得られたデータの逐語録から抽出された語りの中からそれらの文脈をコード化し、カテゴリ化を行い、さらに困難感を減らせる対応を検討した。

【倫理的配慮】本研究はA大学病院の倫理委員会の審査を受け了承を得た。

【結果】電話トリアージ看護師が感じる困難感は、「他の業務をしながら、トリアージをするのは難しい」、「どんな症状でも大学病院の受診を希望する患者の対応に悩む」、「軽症と判断しても実際にみていないので受診の判断に困る」、「診療科が多いのにも関わらず、判断基準がないためにトリアージをするのが難しい」、「医師との連絡調整に悩む」の5カテゴリを抽出した。抽出した困難感に対しての対応策として、「相談できる環境作り」、「外来や病棟との連携」、「受付事務との情報共有」、「カルテへの記載の徹底」の4カテゴリを抽出した。具体的には、「他の業務をしながら、トリアージをするのは難しい」という困難感に対して、トリアージ看護師は2名配置されており、受診の判断に悩んだ時や繁忙時はお互いに協力し「相談できる環境作り」が必要であることが明らかになった。

【考察】今回上がったカテゴリからは、視覚で捉えないため情報が得られにくい。そのため「軽症と判断しても実際にみていないので受診の判断に困る」、「どんな症状でも大学病院の受診を希望する患者の対応に悩む」、「診療科が多いのにも関わらず、判断基準がないためにトリアージをするのが難しい」という困難感があると考える。「他の業務をしながら、トリアージをするのは難しい」ために繁忙時の負担を感じており、医師に受診内容を伝えるのが難しい状況から「医師との連絡調整に悩む」ため情報伝達の難しさがあると考えられた。これらの困難感に対して、抽出された対応策を取り入れながらトリアージを実践していけるような調整が必要と思われる。

電話トリアージは判断に対しての優れたアセスメント能力やコミュニケーション能力が必要となり、対応する看護師の幅広い知識が求められる。今回の対象者は、導入当時から関わっている看護師で、救急外来経験年数が9年であり教育的な困難感は見られなかった。救急外来経験の違いにより困難感の相違が生じる可能性はあり、効果的なコミュニケーションのツールであるSBARの導入や看護師の育成が必要になってくるのではないかと考える。