第21回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

トリアージ

[O31] O31群 トリアージ⑤

Sat. Oct 5, 2019 3:20 PM - 4:20 PM 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:松﨑 八千代(筑波メディカルセンター病院)

[O31-3] 院内トリアージにおけるルール化の再構築~時間外診療での患者安全についての取り組み~

松井 智子, 後藤 斉代, 岩井 恵巨, 永井 恵子 (一宮市立市民病院)

【はじめに・目的】
A病院は、地域の基幹病院として一次救急から三次救急にいたる患者を受け入れ、年間の救急搬送件数が7000件を超え診療時間外には約2万人の患者がウォークインで受診している。一度に多くの患者が来院し、煩雑する場でも緊急度の 高い患者を見極め、円滑に診療が受けられるよう、診療の流れをコントロールする手段として院内トリアージを実施している。しかし、ウォークイン受診する全ての患者に対して院内トリアージを実施するには至っていない。そこで、院内トリアージについてのルールを見直し、システムを整備する活動を行った。

【方法】

実施期間:平成30年1月~ 平成30年12月 (比較データは平成29年4月~平成29年12月)
対象:A病院救急外来で勤務する医師・看護師・医療事務員
方法:6年前の導入時期に作成した院内トリアージ実施マニュアルを改訂した。院内におけるトリアージルールを図表で表し、いつでも確認できる場所に配置、誰もが手にとれるように工夫した。そして、院内トリアージを実施する看護師を対象に、現場で、実際に患者が来院してからどのような流れでトリアージが行われるのかシミュレーションを取り入れたJTAS活用の方法や臨床推論の考え方を学ぶ学習会を開催した。その後、活動前後の院内トリアージ実施状況をデータ・数値化し、変化を確認した。

【倫理的配慮】
活動の主旨を口頭で説明し関わるスタッフの了承を得るとともに活動時に個人が特定できないよう配慮し、A病院看護研究倫理審査委員会の承認を得た。

【調査結果】
院内トリアージ実施マニュアルを改訂し、明文化・掲示することでトリアージのルールが明確となり、院内トリアージナースの行動が標準化された。また、看護師のみでなく医療事務・業務課職員・医師と多職種でマニュアルを共有した。ルールを共有したことでトリアージにかけるべき患者も明確となり、院内トリアージ実施率1か月平均が31.2%から54.5%へと増加し、ウォークイン受診する患者の半数を円滑な診療へと結びつけることが可能となった。また、院内トリアージナースに対する知的技能への働きかけを続けた結果、実施率が増加してもトリアージ判定の適正率は80%以上を維持できた。

【考察】
木澤は、「院内トリアージシステムを確立させるためには各施設でルールを明文化し、誰もが同じ視点で判断できるようにすべきであり、院内トリアージに関わる多職種の総合力が効果的な院内トリアージの実践に繋がる。」と述べている。今回、院内トリアージのシステム標準化により、ウォークイン受診患者に携わる多職種が、診療までの間にひとりでも多くの患者の異変を察知しようと意識した結果、院内トリアージ実施患者数が増えた。また、ルールの明確化に加えトリアージナースの知的技能を支援したことで、短時間でも正確な情報を集める能力やアセスメント能力を高め、適正率の維持へと結びつけることができたと考える。

【まとめ・今後の展望】
今後の課題は、多職種での連携を継続し、全例に院内トリアージが実施できるようシステムを継続的に評価し発展させていきたい。また、院内トリアージの内容をさらに的確なものとしウォークイン受診患者の安全を守れるよう、看護師の学習支援を定着化したい。