[O4-1] 救命救急センター看護師の道徳的感受性の実態 -倫理検討会の充実をめざして-
【はじめに】
看護倫理教育の方略として、道徳的感受性の育成と事象を客観的に倫理的側面から分析する倫理的感受性の育成が必要とされている。A病院救命救急センター(以下部署)でも2017年から月1回倫理検討会(以下検討会)の開催や日常的にJonsenの4分割表を活用し倫理的課題の明確化と介入の検討などを行っている。本稿では、今後の検討会の充実を図るために道徳的感受性に焦点を当て、実態を調査したので報告する。
【目的】
救命救急センター看護師の道徳的感受性の実態を調査し、救急看護領域における看護倫理教育充実への示唆を得る。
【方法】
A病院救命救急センターの看護師39名を対象に道徳的感受性テスト(Moral Sensitivity Test:以下MST)日本語版の質問紙を用いて調査を行った。調査は、質問紙作成者が行った方法に準じて行い、「全くそう思わない」を1点、「全くそう思う」を6点とした。使用に際し、許可を得た。分析は、各質問項目の記述統計を算出した後、各質問項目の相関係数を算出した。
【倫理的配慮】
A病院看護局倫理委員会の承認を得た。
【結果】
有効回答数は、37名(回収率95%)であった。全ての質問項目の度数分布を算出し、フロアー効果と天井効果が無いことを確認した。個別のMSTの各質問項目の平均値は、3.00±0.98であった。
MSTの平均得点が高い質問項目上位3つは、「回復する見込みのほとんどない患者に、よい看護を行うことは難しいことだと思う」(4.76±0.98)、「例えば、ターミナル期のアルコール中毒患者がグラス1杯のウイスキーを求めたら、この望みをかなえるのは自分の仕事である」(3.90±1.05)、「患者の回復をみなければ、看護・医療の役割の意義を感じない」(3.76±1.16)であった。
平均得点が低い質問項目の最下位から3項目は、「入院患者に接することは日常のもっとも重要なことである」(1.62±0.68)、「広く患者の状態について理解していることは、専門職としての責任である」(1.76±0.76)、「患者が望むことに逆らって、実行しなければならない状況に直面した時に、同僚のサポートは重要である」(2.03±0.55)であった。下位2項目は、『患者の理解』の構成要素に属していた。
標準偏差の最大値は、「嫌いな患者によい看護を行うことは難しいと思う」(3.60±1.28)、最小値は、「患者が望むことに逆らって、実行しなければならない状況に直面した時に、同僚のサポートは重要である」(2.03±0.55)であった。
他の質問項目との相関関係が5つ以上あるものが5つあり、その中の「患者の言動から、患者が私を受け入れていると思う」と「看護・医療の仕事は個人的には適していないと、しばしば感じる」は、ともに『葛藤』の構成要素に属していた。
【考察】
先行研究において、一般病床の看護師対象の調査では、『患者の理解』に関連した質問項目の平均得点は高く示されていた。しかし、本研究において、『患者の理解』に関連した質問項目の平均得点が低く示されたことは、救命救急センターにおける医療や患者特性などに関連していると考える。毎月開催する検討会において、毎回検討事例に対して『患者の理解』の必要性を再確認しているが、検討会での再確認にとどまらず日常的に『患者の理解』を実践に活かすことができる働きかけの必要性が示唆された。また、同様に他の質問項目に影響を持つ観点から、『葛藤』に関連した検討会を行うことが、倫理的感受性を高めることに有用ではないかと示唆された。
看護倫理教育の方略として、道徳的感受性の育成と事象を客観的に倫理的側面から分析する倫理的感受性の育成が必要とされている。A病院救命救急センター(以下部署)でも2017年から月1回倫理検討会(以下検討会)の開催や日常的にJonsenの4分割表を活用し倫理的課題の明確化と介入の検討などを行っている。本稿では、今後の検討会の充実を図るために道徳的感受性に焦点を当て、実態を調査したので報告する。
【目的】
救命救急センター看護師の道徳的感受性の実態を調査し、救急看護領域における看護倫理教育充実への示唆を得る。
【方法】
A病院救命救急センターの看護師39名を対象に道徳的感受性テスト(Moral Sensitivity Test:以下MST)日本語版の質問紙を用いて調査を行った。調査は、質問紙作成者が行った方法に準じて行い、「全くそう思わない」を1点、「全くそう思う」を6点とした。使用に際し、許可を得た。分析は、各質問項目の記述統計を算出した後、各質問項目の相関係数を算出した。
【倫理的配慮】
A病院看護局倫理委員会の承認を得た。
【結果】
有効回答数は、37名(回収率95%)であった。全ての質問項目の度数分布を算出し、フロアー効果と天井効果が無いことを確認した。個別のMSTの各質問項目の平均値は、3.00±0.98であった。
MSTの平均得点が高い質問項目上位3つは、「回復する見込みのほとんどない患者に、よい看護を行うことは難しいことだと思う」(4.76±0.98)、「例えば、ターミナル期のアルコール中毒患者がグラス1杯のウイスキーを求めたら、この望みをかなえるのは自分の仕事である」(3.90±1.05)、「患者の回復をみなければ、看護・医療の役割の意義を感じない」(3.76±1.16)であった。
平均得点が低い質問項目の最下位から3項目は、「入院患者に接することは日常のもっとも重要なことである」(1.62±0.68)、「広く患者の状態について理解していることは、専門職としての責任である」(1.76±0.76)、「患者が望むことに逆らって、実行しなければならない状況に直面した時に、同僚のサポートは重要である」(2.03±0.55)であった。下位2項目は、『患者の理解』の構成要素に属していた。
標準偏差の最大値は、「嫌いな患者によい看護を行うことは難しいと思う」(3.60±1.28)、最小値は、「患者が望むことに逆らって、実行しなければならない状況に直面した時に、同僚のサポートは重要である」(2.03±0.55)であった。
他の質問項目との相関関係が5つ以上あるものが5つあり、その中の「患者の言動から、患者が私を受け入れていると思う」と「看護・医療の仕事は個人的には適していないと、しばしば感じる」は、ともに『葛藤』の構成要素に属していた。
【考察】
先行研究において、一般病床の看護師対象の調査では、『患者の理解』に関連した質問項目の平均得点は高く示されていた。しかし、本研究において、『患者の理解』に関連した質問項目の平均得点が低く示されたことは、救命救急センターにおける医療や患者特性などに関連していると考える。毎月開催する検討会において、毎回検討事例に対して『患者の理解』の必要性を再確認しているが、検討会での再確認にとどまらず日常的に『患者の理解』を実践に活かすことができる働きかけの必要性が示唆された。また、同様に他の質問項目に影響を持つ観点から、『葛藤』に関連した検討会を行うことが、倫理的感受性を高めることに有用ではないかと示唆された。