第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O4] O4群 看護教育①

2019年10月4日(金) 14:00 〜 15:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:諸岡 健一郎(社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院)

[O4-3] 救命救急センターに勤務する看護師の自律性尺度開発 –構成概念妥当性・信頼性・基準関連妥当性・安定性の検証–

大江 理英, 杉本 吉恵, 北村 愛子 (大阪府立大学大学院 看護学研究科)

はじめに 救命救急センターに勤務する看護師(以下,救急看護師)は,救急患者への救命目的の迅速な判断や対応と擁護が役割であるが、これらの能力を高めることに関連する救急看護師の自律性を測定できる尺度は開発されていない。これまで救急看護師の自律性を質的研究(大江,2017)より抽出し救急看護師の自律性尺度(Autonomy Scale for Emergency Nurses 以下,ASENS)案を作成,専門家会議などで表面妥当性と内容妥当性を検証した。ASENS案は6概念77項目 (「救急患者と救急の場への判断に基づく行動」,「救急患者・家族の人格を尊重するための行動」,「救急患者と家族のニーズを引き出し充足するための行動」,「医療者と救急患者とその家族との協働を促進する行動」,「救命のために医療チームで協働すること」,「看護ケアの質を維持・向上させるための行動」)で構成された。
目的 ASENS案の構成概念妥当性・信頼性・基準関連妥当性・安定性の検証。
用語の操作的定義 自律性:専門的な知識や技術に裏付けられた自主的・主体的な判断に基づき,イニシアチブや責任を取り行動すること。
研究方法 研究対象 全国の救命救急センター284施設の救急看護師3408名。研究期間 2017年1月~7月。調査内容 基本属性,ASENS案,職務満足測定尺度(撫養,2010),看護の専門職的自律性測定尺度(菊池,原田,1997),小谷野開発DPBS日本語版尺度(小谷野,1998)。データ収集方法 救急看護師を対象に無記名自記式質問紙調査を実施(2017年1月~7月)。再テストは1回目の調査の1か月後にASENS案で調査を実施。倫理的配慮 大阪府立大学看護学研究倫理委員会で承認を得た。データ分析方法 構成概念妥当性は記述統計量を算出,項目分析後に探索的因子分析を実施。既知グループ法は先行研究より「救命救急センターに勤務する8年以上の救急看護経験を持つ看護師のほうが8年未満の救急看護経験をもつ看護師より自律性が高い」を仮説に救急看護経験8年前後でマン・ホイットニーのU検定を実施。信頼性はクロンバックのα係数を算出。基準関連妥当性は既存尺度とASENS得点間で相関分析を実施。再テストは探索的因子分析後の尺度項目で分析。
結果 有効回答434名(有効回答率12.7%)。平均年齢35.5±7.6歳。平均救急看護経験年数5.6±4.3年。構成概念妥当性の検証は,項目分析を経て因子分析(主因子法,プロマックス回転)で3因子37項目を抽出。ASENS案の各因子と尺度項目の検討で解釈困難な4項目を削除し,再度,因子分析を実施。ASENSは「患者・家族を擁護する行動」,「治療を推進する行動」,「回復に向けた患者・家族への支援」の3因子33項目で構成され構成概念妥当性を確認した。既知グループ法は救急看護経験年数8年以降のASENS総点が有意に高かった(p<0.00)。信頼性はASENS総点のクロンバックのα係数は0.94で,内的一貫性を認めた。ASENS総点は各尺度総点と有意な相関を認め,基準関連妥当性を確認できた。再テストは201名を分析対象に1回目と2回目のASENS総点間(r=0.72,p<0.01)で有意な相関を認め安定性を確認できた。
考察 ASENSは救急患者と家族を擁護し,救命を第一義とする救急医療を促進し,患者の回復を促進するために救急看護師が自ら考え行動する尺度項目で構成された。本尺度の構成概念妥当性・信頼性・基準関連妥当性・安定性は確保され,救急看護師の行動の側面における自律性を反映できる尺度が開発できたと考えられる。