第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

医療安全

[O7] O7群 医療安全

2019年10月4日(金) 10:30 〜 11:20 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:杉本 環(日本大学医学部附属板橋病院)

[O7-2] A病院コードブルー要請の実態と課題

立野 淳子 (小倉記念病院クオリティマネジメント科)

【目的】
 本研究の目的は、コードブルー報告書を元に、心肺停止に至った急変症例を振り返ることで、「防ぎえた死」をなすくための院内体制について検討することである。
【方法】
 対象者:調査期間内に、コードブルー要請が発動された127名
 調査期間:2017年4月〜2019年3月
 データ収集方法:コードブルー報告書に記載された情報(患者情報、発生場所、発生時間、発見者、急変予測の有無、ROSCの有無、転帰)と、急変の予兆に関する記録の有無と内容、医師への報告および医師による診察の有無を診療録より情報収集した。
 分析方法:各項目について単純集計を行った。
【倫理的配慮】
 院内看護部倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 コードブルー要請のあった127名の内訳は、2017年度62名、2018年度65名であった。
1. 対象者の概要
 2017年度の対象者の平均年齢は、73.2±11.9歳で、男性が38名(61.3%)、内科系疾患で加療中であった患者が47名(75.8%)であった。
 2018年度の対象者の平均年齢は、75.6±11.6歳で、男性が38名(58.5%)、内科系疾患で加療中であった患者が42名(64.6%)であった。
2. コードブルー要請発生状況
 月の平均コードブルー要請件数は、2017年度5.2件、2018年度5.4件であった。要請場所は、2017年度は、循環器病センター23件(37.1%)、その他の一般病棟23件(37.1%)、外来10件(16.1%)であり、2018年度は、循環器病センター29件(44.6%)、その他の一般病棟18件(27.7%)、外来4件(6.2%)であった。要請時間は、2017年度は6〜12時が22件(35.5%)と最も多く、2018年度は12〜18時が20件(30.8%)と最も多かった。発見者は、両年度ともに看護師が最も多かった(2017年度53名(85.5%)、2018年度63名(96.9%))。ROSC者数は、2017年度43名(69.4%)、2018年度41名(63.1%)で、生存ICU退出者数は、2017年度25名(40.3%)、2018年度33名(50.8%)であった。
3. 急変の予兆に関する記録とその後の対応
 急変の予兆について「有」は、2017年度15名(24.2%)、2018年度18名(27.7%)であった。そのうち、予兆について看護記録に記録されていたのは、2017年度9名(60.0%)、2018年度12名(66.7%)で、医師に報告されたのは、2017年度5名(55.6%)、2018年度4名(33.3%)、医師が診察に訪室したのは2017年度2名(40.0%)、2018年度3名(65.0%)であった。
 急変の予兆として記録された患者の症状では、両年ともにSpO2低下が最も多く、その他、呼吸様式の変化、血圧や脈拍の変動、呼吸困難感などの自覚症状が多かった。
【考察】
 本調査によって、急変の予兆が認識されていた割合は20%程度であり、患者の異変が見過ごされている可能性が示唆された。また、看護師が異変に気づいていても医師への報告や診察にまで至っていないなどの課題も明らかになった。
 患者の急変は、いつ、どの場所でも発生することは、本調査でも明らかであり、「防ぎえた死」をなくしていくためには、当院の特徴に応じた早期発見のためのスケールの導入や初期対応を行う人材やシステムの構築などが喫緊の課題である。