第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD4] 高齢社会に向けた病院前救急診療活動の現状と展望

2019年10月5日(土) 14:40 〜 16:30 第2会場 (2F コンベンションホールB)

座長:伊藤 敬介(高知医療センター), 福田 ひろみ(徳島赤十字病院 ER)

[PD4-1] 東京医科歯科大学医学部附属病院におけるドクターカーの活動

伊藤 暁子 (東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター)

当院は、傷病者搬送用ベッドのない乗用車型ドクターカーを運行している。活動範囲は主に千代田区、中央区及び文京区の一部で、東京消防庁司令室の要請から3分以内に医師、看護師、事務員が現場に出動する。2016年1月から2019年6月の間の出動件数は年間約288件で、出動先は千代田区約68%、次いで中央区、文京区の順に多かった。要請内容の最多は意識消失35.8%で、CPA12%、社会死3%だった。CPA及び社会死は年間約46.3人で、60歳代以上が60.8%を占めていた。要請場所はオフィス25%、駅や商業施設などの公共施設48%、住居9%だった。傷病者年齢は20歳代が最多で18.1%、40~60歳代13.1%、70~90歳代7.7%だった。現場活動後、傷病者は当院を含めた2次、3次救急施設へ東京消防庁の救急車で搬送されるか、社会死や救命不能と判断された場合は現場で死亡確認を行い警察に引き継がれるかが殆どだった。
2015年の東京都の人口統計によると、出動先最多の千代田区は、昼夜間人口比率が東京都内最大の1460.6で、昼間の人口が夜間人口の14.6倍となる1)。また65歳以上の年齢別人口割合は東京都22.7%に対し千代田区は18.2%である2)。千代田区は、霞が関などの官庁街、経済の中枢である丸の内や大手町、東京駅周辺の繁華街など昼間に人口が集中する反面、官庁やオフィス、皇居があるために住宅地が少なく、夜間人口が極端に少なく高齢者人口の割合も少ないという「都心部」の特徴をもつ。
 これらの現状から、当院のドクターカー活動には、都心部のいわゆる働き盛りである若い年齢層からの要請が多いが、60歳代以上の要請では社会死やCPAなど重篤なものが多いという特徴があることがわかった。現在、社会死などのケースでは、現場からかかりつけ医に連絡することは殆どなく、地域医療との連携は当院の課題であるといえる。
このパネルディスカッションでは、都心部の救急がどのように地域医療と関わっていけるか、今後の展望について可能性を検討していきたい。


1)東京都総務局統計部人口統計課,東京都の統計(2015)「2-12地域別昼間人口及び流入・流出人口」, http://www.toukei.metro.tokyo.jp/tnenkan/2017/tn17q3i002.htm ,2019年7月1日閲覧.

2)総務省,統計局統計調査部国勢統計課,人口等基本集計(2015)「3-2高齢世帯員の有無による世帯の類型(17区分)別一般世帯数,一般世帯人員及び65歳以上世帯人員」,
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka.htm ,2019年7月1日閲覧.