第21回日本救急看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD4] 高齢社会に向けた病院前救急診療活動の現状と展望

Sat. Oct 5, 2019 2:40 PM - 4:30 PM 第2会場 (2F コンベンションホールB)

座長:伊藤 敬介(高知医療センター), 福田 ひろみ(徳島赤十字病院 ER)

[PD4-2] 高齢社会に求められるドクターカーの役割

佐々 智宏 (広島大学病院高度救命救急センター)

団塊の世代が75歳以上になる2025年を待たず、高齢社会化の進展から高齢者を中心に救急需要が増加している。高齢者は慢性疾患を抱え、予備能力も不足していることから重症化しやすく、緊急搬送となる場合もある。独居老人など症状によっては本人の意思が確認できず、延命を望まない救急搬送も散見されると言われる。

人生の最期を自宅で迎えることを希望する国民が多いとされる一方で大半は人生の最終段階における医療・ケアのあり方の話し合いをしていないと言われる。意思決定できなくなった場合に備えてアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning :ACP)があるが、誰も自分の最期に向き合うことはなかなかできない。

現状の高度医療の進化は目覚ましく、侵襲的な医療介入(体外循環、補助循環、血液透析、挿管・人工呼吸管理等々)により延命することができる。緊急度・重症度が高いほど、本人や家族の意向が医療(Cure)で判断され、延命につながり、看取り(最期)が病院となっている。これからは、医療(Cure)による根治から維持医療・支える医療(Care)、延命から緩和・終末期医療、医療提供の場を病院から在宅、そして、看取り(最期)も病院から在宅にパラダイムシフトできないだろうか。
そのため、今後はドクターカーによる往診診療で集学的治療の適応がない場合、患者の在宅医療への考え・意向など、患者と家族の人生の最終段階の合意形成もしくは代理意思決定を踏まえ、可能な範囲で在宅医療を提供し人生の終焉に在宅での自然死の看取りの選択への一助を担う重要な役割を果たすと考える。