[RTD15-3] 術直前に心停止となった患者家族への経験則からの看護介入
はじめに
救急搬送された患者は、治療を受けるために手術室へ急遽移動することがある。患者とその家族は、治療中にも生命危機に直面した状況が続く。緊急搬送されたことの心理的負荷に加えてそれらの状況を受け入るための家族危機の回避やそれ以降の経過の受け入れについて家族員への看護介入が必要である。今回、手術治療直前に心停止となった患者家族看護について経験則をもとにした関わりを続け、家族員の生活再構築に至った事例について報告する。
目的
術前に心停止となり術後回復にも時間を要する可能性が高い家族員への家族看護を行い、家族危機を回避する。
方法
1.事例紹介 患者は50代男性、突然の痛みを訴え、救急車要請され救急部搬送された。解離性大動脈瘤の診断で緊急手術を受けたが、直前に瘤破裂による心停止となった。手術は予定通り行われたが、術後心停止の影響と思われる広範囲脳梗塞を併発した。
2.介入方法
患者の年齢、心停止に至った経緯から患者家族の危機的状況を予測した看護師から術直後にコンサルテーションをうけた。患者の状態に留意しながら家族員に接触し、患者の病状認識、家族員の支援状況、家族員の疲労度などの情報を得、看護介入を行った。
倫理的配慮
データの解釈に必要な情報以外の記載は行わず、不必要な個人情報を記載しない。なお、発表に際して所属施設看護部の確認を得た。
結果
【術当日】病状説明として家族の状況について病状認識、家族員の支援の情報を家族員から収集した。患者は妻と大学生の子ども一人と同居、長子は県外の大学に在学中。術直後の病状説明では妻から意識回復についての質問があり、医師からは鎮静中であり数日かかるか、意識が戻らないかは現時点では分からない事が伝えられていた。家族員のほか、妻と患者の親族も家族控え室におり、一族で妻を支えていることが会話内容からも把握できた。この時点で危機状況には至っていない判断した。患者は中枢性の発熱がみられた。
【術後2日目】医師から広範囲脳梗塞と説明がされた。妻は「目を覚まさないのか」と動揺を見せた。病状説明後、妻に「目を覚ます」とはどんなことなのかを尋ねたところ「目を開けて生きていてくれるだけで良いです」といった。医療者は目を覚ますことを会話ができるととらえているが、妻の希望は生きて欲しいであった。病院に詰めていようとするため、帰宅しベッドで眠ることを勧めた。
【術後10日目】医師から意識の回復は望めないだろうと説明を受けた。病状説明後、遷延性意識障害から回復した患者看護の経験則から、現在の反応から時間はかかるが、開眼やわずかな反応がみられ、今後視線が合う可能性もあることを伝え希望をつないだ。また、転院しての長期療養が予測されることから今後の生活設計について面談を行った。
考察
心臓手術術後脳症の発生頻度は0.8~5.2%と言われ脳梗塞は2~5%との報告がある。今回の患者は救急患者でかつ破裂をしており、致死的脳障害に陥る可能性があった。医療者は第一義的に生命の危機を回避することに集中し、術後脳症が確実になった時点で回復が難しいとの判断に至った。しかし、家族にとっては生命が維持されることと開眼することが「生きている」ことの証しであり意識回復のために家族ができる事は行いたいと考えていた。
看護介入としては、患者の状況に応じて病状の理解を確認するとともに療養の長期化が予測される時点で家族員の社会生活への復帰のめどについての示唆を行った。このことにより自宅療養を含めて長期的に患者を支えていくための家族員の社会生活あり方の予測に繋がり家族員の心理的安定性にも繋がったと考える。
救急搬送された患者は、治療を受けるために手術室へ急遽移動することがある。患者とその家族は、治療中にも生命危機に直面した状況が続く。緊急搬送されたことの心理的負荷に加えてそれらの状況を受け入るための家族危機の回避やそれ以降の経過の受け入れについて家族員への看護介入が必要である。今回、手術治療直前に心停止となった患者家族看護について経験則をもとにした関わりを続け、家族員の生活再構築に至った事例について報告する。
目的
術前に心停止となり術後回復にも時間を要する可能性が高い家族員への家族看護を行い、家族危機を回避する。
方法
1.事例紹介 患者は50代男性、突然の痛みを訴え、救急車要請され救急部搬送された。解離性大動脈瘤の診断で緊急手術を受けたが、直前に瘤破裂による心停止となった。手術は予定通り行われたが、術後心停止の影響と思われる広範囲脳梗塞を併発した。
2.介入方法
患者の年齢、心停止に至った経緯から患者家族の危機的状況を予測した看護師から術直後にコンサルテーションをうけた。患者の状態に留意しながら家族員に接触し、患者の病状認識、家族員の支援状況、家族員の疲労度などの情報を得、看護介入を行った。
倫理的配慮
データの解釈に必要な情報以外の記載は行わず、不必要な個人情報を記載しない。なお、発表に際して所属施設看護部の確認を得た。
結果
【術当日】病状説明として家族の状況について病状認識、家族員の支援の情報を家族員から収集した。患者は妻と大学生の子ども一人と同居、長子は県外の大学に在学中。術直後の病状説明では妻から意識回復についての質問があり、医師からは鎮静中であり数日かかるか、意識が戻らないかは現時点では分からない事が伝えられていた。家族員のほか、妻と患者の親族も家族控え室におり、一族で妻を支えていることが会話内容からも把握できた。この時点で危機状況には至っていない判断した。患者は中枢性の発熱がみられた。
【術後2日目】医師から広範囲脳梗塞と説明がされた。妻は「目を覚まさないのか」と動揺を見せた。病状説明後、妻に「目を覚ます」とはどんなことなのかを尋ねたところ「目を開けて生きていてくれるだけで良いです」といった。医療者は目を覚ますことを会話ができるととらえているが、妻の希望は生きて欲しいであった。病院に詰めていようとするため、帰宅しベッドで眠ることを勧めた。
【術後10日目】医師から意識の回復は望めないだろうと説明を受けた。病状説明後、遷延性意識障害から回復した患者看護の経験則から、現在の反応から時間はかかるが、開眼やわずかな反応がみられ、今後視線が合う可能性もあることを伝え希望をつないだ。また、転院しての長期療養が予測されることから今後の生活設計について面談を行った。
考察
心臓手術術後脳症の発生頻度は0.8~5.2%と言われ脳梗塞は2~5%との報告がある。今回の患者は救急患者でかつ破裂をしており、致死的脳障害に陥る可能性があった。医療者は第一義的に生命の危機を回避することに集中し、術後脳症が確実になった時点で回復が難しいとの判断に至った。しかし、家族にとっては生命が維持されることと開眼することが「生きている」ことの証しであり意識回復のために家族ができる事は行いたいと考えていた。
看護介入としては、患者の状況に応じて病状の理解を確認するとともに療養の長期化が予測される時点で家族員の社会生活への復帰のめどについての示唆を行った。このことにより自宅療養を含めて長期的に患者を支えていくための家族員の社会生活あり方の予測に繋がり家族員の心理的安定性にも繋がったと考える。