第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

その他

[RTD15] RTD(CN)15群 その他③

2019年10月5日(土) 15:00 〜 16:20 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:門馬 治(日本医科大学武蔵小杉病院)

[RTD15-4] 救急看護特定認定看護師としての活動の現状と課題 -ジェネラリストの素養を持ったスペシャリストとして-

辻 俊行 (岐阜大学医学部附属病院高度救命救急センター)

【はじめに】

 団塊の世代が75歳以上となる2025年には、超高齢化社会となり、医療を必要とする患者と医療を供給する医療者の医療の需給バランスが崩れる危険性がある。そのバランスを保持するため、全ての看護分野を俯瞰的に見ることができる高水準なジェネラリスト看護師の必要性が高くなっている。このような看護師を育成する手段の一つに、特定行為に係る看護師研修があると考える。私は平成28年度に、公益社団法人日本看護協会の特定行為研修「救急・集中ケアモデル」を受講し、5区分14行為の研修を修了した。この研修で、ジェネラリストに求められる高い知識や技術を習得し、それを私自身の専門分野(救急看護)に活かすため、日々切磋琢磨している。本セッションでは、救急・集中治療領域におけるジェネラリストの素養を持ったスペシャリスト(救急看護特定認定看護師)としての活動と課題を報告する。

【報告期間】

 平成29年4月から平成31年3月までの救急看護特定認定看護師としての活動を報告する。本報告について、A病院の倫理審査委員会の承認を得ている。

【活動内容】

 特定行為研修修了後、部署(高度救命救急センター)の看護の問題をSWOT分析し、平成29年度は人工呼吸器からの早期離脱を目標に取り組んだ。特定行為手順書に基づき実践し、多職種の協力も得ながら取り組めたことで、人工呼吸器からの早期離脱に寄与できた。また、この取り組みを通し、スタッフと共に人工呼吸管理患者の覚醒を促し、離床を目指す必要性を強く感じた。そのため、平成30年度は、看護師が適切に鎮静管理できることを目標に取り組んだ。鎮静管理の学習会の開催、鎮静管理の取り決め・鎮静プロトコルの作成をしたことで、スタッフが適切な鎮静管理を実施できるようになり始めた。

 また、平成30年と平成31年の2月~3月、日本看護協会の特定行為研修「救急・集中ケアモデル」の実習生をA病院で受け入れた。私は実習調整者として、実習生とディスカッションしたり、医師と実習生のコーディネーターとして関わり、医療事故なく安全に実習を終えることができた。

【考察】

これらの実践の取り組みは、研修で身に付けた臨床推論、薬物動態学など多職種の思考過程を活用し、チームのハブ的役割として、チーム医療の活性化に寄与でき得られた結果であると考える。また、A病院には特定行為研修に係る委員会が設置されているため、安全に円滑に実習が行えたと考える。
 一方、A病院には特定認定看護師は私一人であり、一人だけでは患者・家族及び集団に対して、臨床推論力と病態判断力に基づき、個別性のある専門的な看護実践を継続して行うことは難しい。そのため、今後、特定認定看護師を増やし、患者の状態に合わせたタイムリーな看護実践を行い継続することで、患者の外来待ち時間の短縮、重症化の予防、早期社会復帰を目指した質の高い医療を効率的に提供していく必要がある。さらに、救急・集中治療領域におけるジェネラリストの素養を持ったスペシャリスト、救急看護特定認定看護師として、救急・集中治療領域の看護の質を向上させるために、よりよく働ける組織を構築していくことも急務であると考える。