第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

看護教育

[RTD7] RTD7群 看護教育

2019年10月4日(金) 15:50 〜 17:00 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:樅山 定美(医療創生大学)

[RTD7-4] 胸骨圧迫時における背板とエアマットCPRモード使用の効果のプロバイダーの性別による比較

中野 元1,2, 中井 大介3 (1.金城大学, 2.富山大学医学薬学教育部, 3.富山大学附属病院)

【はじめに】病院内の心停止発生は病床当たり年間0.053±0.046件であり、発生場所の25%はICUで発生すると報告されている。ベッド上の胸骨圧迫は、しばしば浅くなりすぎることが報告されており、生命維持に必要な冠動脈還流量を適切に保つことが困難となる。ICUでは多くの場合にエアマットを使用している。柔らかいベッド上でのCPR(心肺蘇生法)を行う場合は、胸骨圧迫の効果を最大限に発揮させるために、JRCG2015(JRC蘇生ガイドライン2015)では可能ならば背板を用いたCPRを行うことが推奨されている。しかし、胸骨圧迫は体力を要するものであり、体格の異なる男女間では十分な深さを確保する困難さも異なるのではないかと考えられる。また、田路らはプロバイダーの性別による胸骨圧迫有効率を検討し、女性では開始30秒で胸骨圧迫有効率が著しく低下すると述べている。更に女性においては胸骨圧迫をより早く交代すべきであるとも述べている。また、松田らが男女実施者の圧迫の深さを調査したところ、深すぎたもの・浅すぎたものに人数・深さともに男女差はなかったと述べている。しかし、これはAHAガイドライン2005の基準に基づいて調査されておりエアマット使用時にはその差は大きくなると考えられる。そこで、本研究は、エアマット使用時の胸骨圧迫の有効性について、男女の性別から検証する事を目的とする。

【方法】同意の得られた17名(男性9名、女性8名)を対象者に、下記の条件で高機能シミュレーターを用い①を行った後、②~⑤は無作為の順序で行った。①高機能シミュレーターを床に置いた状態で胸骨圧迫を1分間行う。②電動ベッドを高さ45cmに設定し、エアマットを使用し高機能シミュレーターを用い胸骨圧迫を1分間行う。③設定は②同様に行い、背板を挿入し同様に胸骨圧迫を1分間行う。④設定は②同様設置し、エアマットをCPRモード開始後20秒以上経過した後に、胸骨圧迫を1分間行う。⑤設定は④同様に行い、背板を挿入し同様に胸骨圧迫を1分間行う。各スコアを、男性群と女性群に分け比較を行った。【倫理的配慮】本研究は、富山大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。本演題発表に関連して開示すべき利益相反関係にある企業等はない。研究参加者に、研究者が本研究の趣旨を書面と口頭で説明を行った。参加同意後、いつでも撤回可能であり、撤回を伴う不利益は被ることがないことを説明した。

【結果】対象者は、男性群の平均年齢33.2±7.8歳(以下mean±SD)であった。女性群の32.1±3.6歳であった。男性群では各群で優位な差を認めなかった。女性群では床で胸骨圧迫を行った群のスコア(77.0±10.3)と比較し、エアマット群(34.75±22.1: Kruskal-Wallis p<0.05)とエアマット+背板群(35.7±21.6: Kruskal-Wallis p<0.05)は有意な低下を認めた。CPRモード群、CPRモード+背板群ではその他の群と比較し有意な差は認めなかった。

【考察】男性群では有意な差がなく、女性群ではエアマット群、エアマット+背板群で優位な低下を認めたのは男性群に比べ女性群では筋量、体重が共に低いためエアマットが沈んでしまった際に有効な胸骨圧迫を行う事が出来ないからであると考えられる。

【結論】エアマット環境下では胸骨圧迫の際、男性に比べ女性は有効な胸骨圧迫を行うことが困難である可能性が示唆された。