第22回日本救急看護学会学術集会

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会員企画セッション

[MS1] 会員企画セッション1

「心停止ゼロを目指した救命教育の普及と救急看護師の役割」

企画者 星豪人(医療法人社団 筑波記念会 筑波記念病院)

[MS1-03] 中学校におけるPUSHコースへの取り組み:人を助ける心を育む教育

○相田 真理1 (1. 関西学院 中学部 )

Keywords:PUSHコース、BLS教育、学校教育

中学校におけるPUSHコースへの取り組み:人を助ける心を育む教育

〈はじめに〉

 本校で体育の授業にPUSHコースを取り入れたのは、教員が心停止を起こし、その場に居た教員により胸骨圧迫とAEDの使用で救命されたことがきっかけだった。AEDを使用して救命されたことが兵庫県で初めてだったということもあり、当時心肺蘇生法の啓蒙に取り組まれていた大阪ライフサポート協会の先生方との出会いがあった。そこでPUSHコースを授業に取り入れておられる学校があることを知った。学校で心臓突然死により失われる命があること、学校では第一発見者が子どもたちとなる可能性が高いこと、生徒たちには、もし目の前で友達が倒れたら何もできなかったと後悔するより、何か救命の手助けとなる行動がとれる人になってもらいたい。そして何より心臓突然死で亡くなった子どもたちの生きた証であるメッセージを生徒たちに伝えたいと思い2010年度より取り組み始めた。

〈PUSHコースに取り組んで〉

 PUSHコースは毎年中学2年生を対象に授業の1コマ(45分)で取り組んでいる。授業は体育科教員が行い、私はサポートとして授業に入っている。当初は教員側に医療のプロではない自分達が教えて良いのだろうか?正しく教えることができるのだろうか?という戸惑いがあった。しかし大阪ライフサポート協会の先生より指導を受け、回数を重ねる度に自分なりのアレンジを加えながら授業を展開できるようになっている。PUSHコースに取り組むことは、教員側の救命に対するスキルや意識が高まるといった点でもメリットが大きいように感じている。授業では、生徒たちはいつもと違う形態のため、ややテンションが高くザワザワして始まることが多いが、導入のメッセージビデオを観ると顔つきが真剣に変わっていく。そして胸骨圧迫の実習やAEDの使用について熱心に取り組む姿がみられている。

〈救命の出来事〉

 高校生が部活でランニングをしていて心停止を起こすことがあった。幸いにも倒れた生徒の同級生達はPUSH講習を受けた初年度の生徒達だった。チームメイトが心停止に気づき、すぐにAEDを取りに走り教員を呼びに行った。チームメイトが届けたAEDによって生徒の命が救われた。生徒たちが、心停止の際に何をすべきかをわかっていたこと、救命の一助としてそれぞれが行動できたこと、命が救われたことは、学校でPUSHコースに取り組んで良かったと感じる大きな出来事だった。

〈最後に〉

 本校でPUSHコースに取り組み始めてから今年で10年目を迎えようとしている。振り返ってみると、心停止で助かった命があったことは何事にも代えがたい出来事だった。生徒たちからは「今回講習を受けたが、自分が落ち着いて行動できるか不安だ」といった声もあるが、「たった一つのことを知っているか、知らないかで命の分かれ道だからもっと沢山の人にこの授業を知ってほしい」「突然死が自分と同い年の人に起こるなど、誰でも起こりうるということが怖かった。だからこそ今回学んだことで自分には微力でも助けられるかもしれない命に貢献したいと強く思った」といった感想が寄せられている。多くの生徒たちが、心肺蘇生法を知れて良かった、沢山の人が知って心停止は助かる世の中になってほしい、いざという時には助けたいと真っすぐな心で受け止めてくれている印象を持っている。

 中学生という時期にPUSHコースを通じて、人を助ける方法を学ぶことは、救命のスキルや知識だけではなく、人を助けようとする心を育む機会となっているのではないかと感じている。