第22回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-09] 急性期脳梗塞治療における時間短縮へ向けた体制整備~Hybrid ERでの初期診療~

○高橋 龍矢1、久家 典子1、日向 千尋1、豊田 美月1、岡田 美紀1、山本 裕梨子1 (1. 兵庫県災害医療センター)

Keywords:Hybrid ER、脳梗塞

【はじめに】A病院は独立型高度救命救急センターであり、初療看護師はプレホスピタルや初療室での初期治療対応だけでなく、手術や血管内治療など多岐にわたる看護業務を担っている。そのため、搬入から治療まで一貫した看護を実践できることが特徴である。急性期脳梗塞に対する従来までの治療の流れは、A病院と隣接するB病院に脳梗塞患者が搬送され、血管内治療が必要となった場合、A病院の血管撮影室へ移動し治療を行う診療体制であった。しかし、搬入から治療開始までに時間を要する為、2019年3月より脳卒中を疑う全症例をA病院で受け入れる診療体制へ変更となった。急性期脳梗塞では、機能的予後改善のためにもより迅速な治療介入が望まれる。そこで、早期診断を行うため、自走式CTと血管撮影装置を備えた救急初療室であるHybrid Emergency Room(以下、Hybrid ER)で初期診療を行った。今回、脳卒中プロトコール導入後の搬入から治療までの時間経過をまとめたので報告する。
【目的】脳卒中プロトコール導入後の搬入から治療に至るまでの時間経過と各目標時間を比較・検討し、急性期脳梗塞治療の質の向上に繋げる。
【方法】各目標時間をDoor to CT<10分、Door to Needle<30分、Door to Puncture<60分と設定した。整備のソフト面では、アクションカードの作成及び多職種への周知と専門医による講習会を行った。ハード面では、多職種と協働して、物品配置や血管内治療で用いるカテーテル物品のセット化を行った。2019年3月~2020年2月の期間で、急性期脳梗塞患者に対して血管内治療を施行した15症例を対象とし、院内発症や転院症例については対象外とした。
【倫理的配慮】A病院の倫理審査を受け承諾を得た。本研究記録は、個人が特定されるようなデータは含まないように配慮した。
【結果】搬入から検査及び治療開始までの各平均時間は、Door to CT:8±2.6分(中央値9分)、Door to Needle:37.9±9.2分(中央値38.5分)、Door to Puncture:56.8±17.2分(中央値52分)であった。各目標時間の達成率は、Door to CT:86.6%、Door to Needle:28.5%、Door to Puncture:73.3%であった。
【考察】Door to CT/ Punctureでは、70%以上の症例で目標時間を上回ることができた。目標時間の達成に至った要因として、大きく二つ考えられる。一つ目は、Hybrid ERシステムの最大の利点である搬入から早期診断に至るまでの迅速性を急性期脳梗塞における診断に応用したことである。早期診断により、その後の治療方針決定や治療準備が円滑に進行し、延いては治療開始までの時間短縮に大きく関与したと考える。二つ目は、ソフト・ハード面を整備したことである。ソフト面では、アクションカードの作成により多職種が共通認識を持ち、診療の流れや役割行動を明確化することができた。また、専門医による講習会や症例の積み重ねが、スタッフの意識や行動変容に寄与した可能性がある。ハード面では、Hybrid ERと血管撮影室内の動線を考慮した物品配置により、無駄のない効率的な診療に繋がったと考える。一方で、Door to Needleについては目標時間の達成に至っていない。今後、多職種でのシミュレーション研修やカンファレンスを通じて、問題点を明らかにする必要がある。更なるチーム連携と体制整備の強化を図り、多職種と協働してより質の高い医療を提供することが今後の課題である。