[O1-11] 救急外来における終末期ケアの初動-終末期であると告知された場面の一考察-
キーワード:終末期ケア、救急外来看護、告知
【はじめに】
救急外来では、突然の病状説明や治療への決断を迫られることが多く、医師からの説明後に患者および家族に看護介入を必要とする場面が多くある。しかし、介入できる時間は限られ、初対面で信頼関係も構築されていない。今回、患者の意向で家族への病状説明を行っていなかった患者と、患者が末期癌の終末期であることを初めて知った家族と関わることになった。介入が必要であると感じながらも、患者と家族からの反応が想像できず、どのように関わればよいのか分からなかったため、積極的な関わりを避けてしまった。本事例を振り返ることにより、救急外来から開始する終末期の患者および家族対応について検討した。
【倫理的配慮】
所属施設管理者の許可を得て、プライバシーの保護に配慮し、事例検討を行った。
【事例】
患者紹介:A氏は、これまで尿管がんとして外来に定期受診していたが、家族への病状説明を希望せず、本人のみへのインフォームドコンセントのもと、BSCの方針となっていた。今回、A氏は著明な全身状態の悪化のため救急搬送され、初めて家族への病状説明を納得された。そして、救急外来にて本人・妻・長男へA氏が末期がんであると同時に終末期であるとの病状説明が行われた。息子はその場で特に発言はなく、DNAR、BSCの方針に同意された。妻は患者の手を握り涙を流す姿が見られたが、救急外来滞在中に家族同士で会話をする様子はみられなかった。
看護師の対応:医師から患者と家族への説明の際、看護師としてどうしたらよいかわからず、患者や家族からは見えないカーテン越しに話を聞いていた。また病状説明後、十分なケアができるか不安に思い、積極的な関わりを避け、末期がんであることやこれまで家族への病状説明を希望していなかったことには触れることなく、入院先の病棟へ引き継いだ。
【考察】
本事例において、救急外来での関わりは、その後の医療者と患者・家族との関係を形成するうえで重要な局面であり、終末期ケアの初動といえる場面であったと考える。医療者が患者に悪いことを知らせる時のコミュニケーションスキルの1つとして「SPIKES」モデルがある。今回の事例では説明後の看護介入を見越し、家族への説明を希望してこなかった患者の思いと、家族が患者の病状をどのように捉えていたのかを聴取し、お互いがどのような思いで病状説明に臨もうとしているかを「S:Setting and listening skills」に含めて明らかにしておくことが、看護介入として必要であったと考える。また、救急外来で家族同士の会話がなかったことは、患者と家族がお互いの思いを推測して気遣っていたために発生したコミュニケーションの停滞として捉えることができる。必要に応じて患者と家族の感情を尋ね、共感することが、救急外来で行える「E:Emotion」の視点での看護介入であったと考える。また、入院後もその介入が引き継がれるために、救急外来で得た情報や介入の結果を入院病棟へ送り、院内のスタッフと継続的にサポートできる体制を構築していくことが望ましいと考えられた。そして、これらを実践することで、患者・家族と医療者との信頼関係を構築できるとともに患者も家族も納得のいく終末期を過ごす初動になると考える。
【結語】
救急外来という限られた時間のなかで、患者と家族を理解し、全てを完結するということは困難である。だからこそ、終末期の患者および家族へのケアを開始する重要な局面であることを認識して関わり、病棟看護師への情報提供を確実に行い、継続した終末期看護を行える糸口を見つけることが救急看護に求められることである。
救急外来では、突然の病状説明や治療への決断を迫られることが多く、医師からの説明後に患者および家族に看護介入を必要とする場面が多くある。しかし、介入できる時間は限られ、初対面で信頼関係も構築されていない。今回、患者の意向で家族への病状説明を行っていなかった患者と、患者が末期癌の終末期であることを初めて知った家族と関わることになった。介入が必要であると感じながらも、患者と家族からの反応が想像できず、どのように関わればよいのか分からなかったため、積極的な関わりを避けてしまった。本事例を振り返ることにより、救急外来から開始する終末期の患者および家族対応について検討した。
【倫理的配慮】
所属施設管理者の許可を得て、プライバシーの保護に配慮し、事例検討を行った。
【事例】
患者紹介:A氏は、これまで尿管がんとして外来に定期受診していたが、家族への病状説明を希望せず、本人のみへのインフォームドコンセントのもと、BSCの方針となっていた。今回、A氏は著明な全身状態の悪化のため救急搬送され、初めて家族への病状説明を納得された。そして、救急外来にて本人・妻・長男へA氏が末期がんであると同時に終末期であるとの病状説明が行われた。息子はその場で特に発言はなく、DNAR、BSCの方針に同意された。妻は患者の手を握り涙を流す姿が見られたが、救急外来滞在中に家族同士で会話をする様子はみられなかった。
看護師の対応:医師から患者と家族への説明の際、看護師としてどうしたらよいかわからず、患者や家族からは見えないカーテン越しに話を聞いていた。また病状説明後、十分なケアができるか不安に思い、積極的な関わりを避け、末期がんであることやこれまで家族への病状説明を希望していなかったことには触れることなく、入院先の病棟へ引き継いだ。
【考察】
本事例において、救急外来での関わりは、その後の医療者と患者・家族との関係を形成するうえで重要な局面であり、終末期ケアの初動といえる場面であったと考える。医療者が患者に悪いことを知らせる時のコミュニケーションスキルの1つとして「SPIKES」モデルがある。今回の事例では説明後の看護介入を見越し、家族への説明を希望してこなかった患者の思いと、家族が患者の病状をどのように捉えていたのかを聴取し、お互いがどのような思いで病状説明に臨もうとしているかを「S:Setting and listening skills」に含めて明らかにしておくことが、看護介入として必要であったと考える。また、救急外来で家族同士の会話がなかったことは、患者と家族がお互いの思いを推測して気遣っていたために発生したコミュニケーションの停滞として捉えることができる。必要に応じて患者と家族の感情を尋ね、共感することが、救急外来で行える「E:Emotion」の視点での看護介入であったと考える。また、入院後もその介入が引き継がれるために、救急外来で得た情報や介入の結果を入院病棟へ送り、院内のスタッフと継続的にサポートできる体制を構築していくことが望ましいと考えられた。そして、これらを実践することで、患者・家族と医療者との信頼関係を構築できるとともに患者も家族も納得のいく終末期を過ごす初動になると考える。
【結語】
救急外来という限られた時間のなかで、患者と家族を理解し、全てを完結するということは困難である。だからこそ、終末期の患者および家族へのケアを開始する重要な局面であることを認識して関わり、病棟看護師への情報提供を確実に行い、継続した終末期看護を行える糸口を見つけることが救急看護に求められることである。