第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

COVID-19

[O10] 一般演題10

[O10-08] COVID-19感染症に対応した救急看護師の体験 -心理負担の実態-

○前田 晃史1、八田 圭司1 (1. 市立ひらかた病院)

Keywords:COVID-19、救急看護師、心理負担

【目的】世界保健機構(以下WHO)は、医療従事者はコロナウィルス(corona virus disease 2019:以下COVID‐19)の対応の最前線におり、病原体による感染の危険やさまざまなリスクに曝されている。リスクには、病原体への曝露、長時間労働、疲労、業務による燃え尽き、スティグマ、肉体的および心理的暴力などがあると述べている。本調査の目的は、COVID-19に対応した救急看護師を対象として、心理負担などを知ることである。【方法】本調査は症例検討であり、研究参加者は、二次救急医療施設の救急外来に勤務し、COVID‐19に対応した看護師A1名とした。研究方法は、インタビューガイドを用いた半構成的面接法で行った。インタビュー内容は、救急外来でCOVID‐19に対応したことによる心理負担などの経験とした。インタビュー終了後は、録音した内容を基に逐語録を作成し、逐語録からCOVID-19に対応した心理負担などが語られたデータを抽出した。【倫理的配慮】本研究はB施設倫理委員会の審査を受けて実施した。研究参加者へは研究の目的・方法、個人情報保護、研究結果の公表について口頭と文書で説明し、文書で同意を得た。【結果】患者への対応では「ころころ院内の対応が変わって何が本当なのか」など〈目まぐるしく変わる感染対策への対応〉や「マニュアルなんかも後手後手で、患者には臨機応変に対応している」など〈遅れて作成される感染対策方法やマニュアル〉が語られた。自らの感染では「ガイドラインも変わってサージカルマスクだけでいいとか、ガウンはいらないとか最初の対応はなんだったんだろう」など〈簡素化していく個人防護具〉や「潜伏期間中、あと何日か指折り数えました」など〈陽性患者対応後の感染の怖さ〉などが語られた。この状況でも「救急外来の一員としてやらないといけない」など〈救急外来の一員としての責任感〉を持ち、時に「感染しても仕方ないと腹をくくった」など〈感染への覚悟〉を持って患者に対応していた。しかしながら、他者から「お金のために(COVID-19に)対応したんじゃないの」など〈給付金を受け取ることへの避難〉や咳をしたAに対して「感染してないでしょうね」など〈周りの過度な反応〉などの経験していた。【考察】COVID-19 はこれまで人類が経験したことのない感染症であり、対応初期は、医療者はタイベックとN95マスクを装着して対応していた。しかしながら、時間が経つにつれてCOVID-19 の感染力や経路が明らかとなり、個人防御具や感染対策などが非常に短い期間で変わっていった。そのため、〈目まぐるしく変わる感染対策への対応〉に正しい感染対策を理解しないまま実践する不安があったと考える。COVID-19 陽性者への対応により、自らが感染する恐怖を抱きながらも医療者として責任感を持って患者に対応していた。しかしながら、他者からの心無い〈給付金を受け取ることへの避難〉や〈周りの過度な反応〉にやるせない気持ちであったと考える。WHOは、医療従事者の権利、役割、責任として、被害者への支援を含む即時のフォローアップのための対策を講じるなど職員が非難されることのない環境を提供する必要性と述べている。〈給付金を受け取ることへの避難〉や〈周りの過度な反応〉は、医療者以外からも発せられており、院内の環境を整えるだけでは防げないことであると考える。本調査は一名の経験であるため、今後は対象者を増やし、心身の負担の内容とその支援を明らかにする必要があると考える。