[O11-03] 報告する文化の醸成を目指した業務実践報告
Keywords:インシデント報告、報告する文化
<はじめに>
安全文化の確立には報告する文化の醸成が重要である。医療現場は複雑なシステムの中で多職種が関わる場であり、安全とは言い難い環境である。少しでも安全な環境にするためには、インシデントに気づき報告すること、報告を対策に繋げていくことが必要であると考える。A病院は、B市の二次救急指定機関として日々多くの患者を受け入れている。年間救急搬送数は約9,000件、時間外外来は約10,000名の患者が受診する。患者の重症度・緊急度を判断し、急な状態変化への臨機応変な対応が求められており、スタッフの緊張度は高い。多数の患者の診療が同時進行で行われる救急の現場は多職種が関連する場所であり、コミュニケーションエラーが生じやすく、ヒヤリとする場面が多い。A病院の救急センターの看護職員の2018年度のインシデント報告総数は103件、月平均8.6件と少ない状況だった。少しでもヒヤリとしたことに気づき、報告を行い、皆で共有することが重大事故を防止に繋がると考えた。事故へのリスク感性を高めていくことを目的に、「毎月一人一インシデント以上報告する」ことを2019年度の目標とした。1年間の取り組みを報告する。
<目的>
毎月一人一事例以上のインシデント報告を行い、報告する文化を築く。
<方法>
対象:A病院救急センター所属看護職員
調査方法:1ヶ月間に報告されたインシデント報告件数、報告人数を集計した。報告率は月80%以上を目標とした。実施にあたり、病棟会議で報告を行う意義、報告者は責任を問われないことを説明した。四半期ごとに分析を行い結果を掲示した。
調査期間:2019年4月1日〜2020年3月31日
<倫理的配慮>
本研究は所属施設の倫理機関での承認を受けて実施した。
<結果>
インシデント報告率は目標値80%に対して年間平均値65.3%であった。9月と11月は単月で目標を達成した。インシデント報告数は前年度の103件から267件に増加した。
<考察>
インシデント報告数は前年度に比べ2.6倍増加した。4ヶ月に3回以上報告した職員は41%であり、報告する必要性を理解し行動していると考える。1年間のうち一度も報告しなかった職員はいなかったが、4ヶ月に一度以下の報告頻度の職員は14%であった。これは、インシデント報告に否定的なイメージを持っていること、インシデントに気づいていないことが要因と考える。否定的なイメージを持つ理由として、⑴報告しても状況が改善されない、⑵責任追及されているように感じる、⑶面倒、時間がない、⑷恥ずかしい、などが推測される。報告したことを労い感謝すること、自分の報告が業務改善に繋がったという達成感を得ることで、報告しやすい組織を作っていくことができると考える。そのためには、報告を受ける側が目に見える形で有用なフィードバックを行う必要がある。安全文化は「報告する文化、正義の文化、柔軟な文化、学習する文化」の4つの文化から成る。2019年度は「報告する文化」を築いてきた。報告数が増加したことは、不安全なものに気づくことができる職員が増えたことであると考える。遠山は「報告文化の醸成を職員に周知し、根づかせるためのキーワードは、「継続性」「持続性」「ぶれない方針」であり、たとえ嫌がられたとしても、あきらめずに続けることが重要である」と述べている。安全文化の醸成は1年間で築き完結できるものではない。長期間かけて活動を継続していくものである。次年度は、ヒヤリとする場面に気づき自ら報告することができる「報告の文化」を根付かせていきたい。
安全文化の確立には報告する文化の醸成が重要である。医療現場は複雑なシステムの中で多職種が関わる場であり、安全とは言い難い環境である。少しでも安全な環境にするためには、インシデントに気づき報告すること、報告を対策に繋げていくことが必要であると考える。A病院は、B市の二次救急指定機関として日々多くの患者を受け入れている。年間救急搬送数は約9,000件、時間外外来は約10,000名の患者が受診する。患者の重症度・緊急度を判断し、急な状態変化への臨機応変な対応が求められており、スタッフの緊張度は高い。多数の患者の診療が同時進行で行われる救急の現場は多職種が関連する場所であり、コミュニケーションエラーが生じやすく、ヒヤリとする場面が多い。A病院の救急センターの看護職員の2018年度のインシデント報告総数は103件、月平均8.6件と少ない状況だった。少しでもヒヤリとしたことに気づき、報告を行い、皆で共有することが重大事故を防止に繋がると考えた。事故へのリスク感性を高めていくことを目的に、「毎月一人一インシデント以上報告する」ことを2019年度の目標とした。1年間の取り組みを報告する。
<目的>
毎月一人一事例以上のインシデント報告を行い、報告する文化を築く。
<方法>
対象:A病院救急センター所属看護職員
調査方法:1ヶ月間に報告されたインシデント報告件数、報告人数を集計した。報告率は月80%以上を目標とした。実施にあたり、病棟会議で報告を行う意義、報告者は責任を問われないことを説明した。四半期ごとに分析を行い結果を掲示した。
調査期間:2019年4月1日〜2020年3月31日
<倫理的配慮>
本研究は所属施設の倫理機関での承認を受けて実施した。
<結果>
インシデント報告率は目標値80%に対して年間平均値65.3%であった。9月と11月は単月で目標を達成した。インシデント報告数は前年度の103件から267件に増加した。
<考察>
インシデント報告数は前年度に比べ2.6倍増加した。4ヶ月に3回以上報告した職員は41%であり、報告する必要性を理解し行動していると考える。1年間のうち一度も報告しなかった職員はいなかったが、4ヶ月に一度以下の報告頻度の職員は14%であった。これは、インシデント報告に否定的なイメージを持っていること、インシデントに気づいていないことが要因と考える。否定的なイメージを持つ理由として、⑴報告しても状況が改善されない、⑵責任追及されているように感じる、⑶面倒、時間がない、⑷恥ずかしい、などが推測される。報告したことを労い感謝すること、自分の報告が業務改善に繋がったという達成感を得ることで、報告しやすい組織を作っていくことができると考える。そのためには、報告を受ける側が目に見える形で有用なフィードバックを行う必要がある。安全文化は「報告する文化、正義の文化、柔軟な文化、学習する文化」の4つの文化から成る。2019年度は「報告する文化」を築いてきた。報告数が増加したことは、不安全なものに気づくことができる職員が増えたことであると考える。遠山は「報告文化の醸成を職員に周知し、根づかせるためのキーワードは、「継続性」「持続性」「ぶれない方針」であり、たとえ嫌がられたとしても、あきらめずに続けることが重要である」と述べている。安全文化の醸成は1年間で築き完結できるものではない。長期間かけて活動を継続していくものである。次年度は、ヒヤリとする場面に気づき自ら報告することができる「報告の文化」を根付かせていきたい。