第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

看護管理

[O14] 一般演題14

[O14-02] A病院ICU/CCUから病棟へ転出する患者の申し送り内容の検討

○阿由葉 久美子1、山鹿 亜由美1、大島 晴美1 (1. SUBARU健康保険組合太田記念病院)

キーワード:ICU/CCU、継続看護、申し送り

【目的】

 患者がICU/CCU(以下ICUとする)から他病棟へ転出する際の申し送りは口頭のみであり、転出先の看護師から確認や質問など問い合わせが多く、必要な患者情報を申し送ることができていない可能性がある。そこで、ICU看護師の申し送り内容と病棟看護師が必要と知覚する申し送り内容に相違がないかを明らかにし、継続看護に繋がる申し送りの改善に向けた課題を考察した。

【方法】

 対象はA病院ICUの看護師30名、HCUと一般床7病棟の看護師199名。データ収集には選択回答式質問と自由回答式質問からなる質問紙を用いた。自由回答式質問への回答の分析にはBerelson,B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いた。

【倫理的配慮】

 A病院倫理委員会の承認を得て実施した。

【結果】

 質問紙の回収はICU看護師26名(回収率:86.7%)、ICU以外の病棟看護師117名(回収率:58.8%)であり、その割合はHCU13名(11.1%)、救急科15名(12.8%)、脳神経系25名(21.4%)、内科系27名(23.1%)、外科系37名(31.6%)であった。ICU看護師の申し送り内容は、160記録単位から22カテゴリが形成された。病棟看護師がICU看護師から申し送りを受ける中で役立った情報は、355記録単位から28カテゴリが形成された。病棟看護師が申し送りの中でもっと欲しいと思った情報は、166記録単位から27カテゴリが形成された。

【考察】

 ICU看護師の申し送り内容と病棟看護師が役立った情報を比較すると19カテゴリが共通しており、ICU看護師の申し送り内容と病棟看護師が必要と考える情報に相違はないことが明らかになった。また、ICU看護師の申し送り内容と病棟看護師がもっと欲しいと思った情報は13カテゴリが共通していた。それら13カテゴリは、1.家族構成や患者、家族の特徴、家族の面会頻度など社会背景に関すること、2.ADL状況、安静度、継続が必要な看護など、継続の必要があるリハビリや看護に関すること、3.患者の全身状態に関する3つに分類された。ICU看護師は患者の全身状態に視点が偏る傾向にあり、一方病棟看護師は社会背景や継続の必要がある看護に視点を置く傾向にある。社会背景と継続の必要がある看護の情報については、ICU看護師の申し送り内容では具体性に欠け、病棟看護師が求める情報を十分に提供できていない可能性が推察される。そのため、病棟看護師がもっと欲しいと思った情報のカテゴリに関する内容をより詳細に知ることが課題である。

 病棟看護師のみがもっと欲しいと思った情報は14カテゴリであった。これらは、退院支援に関することや継続が必要な処置、認知機能についてであり、病棟看護師が患者の退院後の生活に向けたケアを行うために必要な情報であることが推察された。このことから、病棟看護師がもっと欲しい情報をICU看護師に周知していくことが課題として挙げられた。また、病棟看護師への申し送り内容は看護師個々に委ねられており、統一されていない。さらに、申し送りを行うICU看護師の経験年数や理解の違いにより、病棟看護師にとって必要な情報を十分に申し送ることができない可能性もある。そのため、ICU看護師が統一して申し送りができるよう、カテゴリの詳細な内容を明らかにした上で項目をリストアップし、ICU看護師が活用できる形で周知していくことが課題である。