第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

プレホスピタルケア

[O2] 一般演題2

[O2-01] 大学生を対象とした救命行動実施の有無別による倒れた人に遭遇した後の救助意欲の実態

○馬場 小百合1、佐藤 隆平2、西山 知佳2 (1. 京都大学医学部人間健康科学科、2. 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 クリティカルケア看護学分野)

Keywords:救助意欲、バイスタンダー、心肺蘇生、AED

【目的】蘇生行為の経験はその後の救助意欲に影響を与えると言われている。本研究は、心停止患者に限らず倒れている人に遭遇した大学生を対象に、何らかの救命行動を実施した人または実施できなかった人におけるその後の救助意欲を明らかにする。

【方法】対象:2017年4月に行った学生健康診断を受診したA大学の2、3年生であった。質問紙内容と配布回収:人が倒れた場面への遭遇経験の有無、救命行動実施の有無、今後の救助意欲を含んだ質問紙を健診会場で配布しその場で回収した。解析:胸骨圧迫、AEDの使用、その他の救命行動 (119番通報等) のうち少なくとも1つを行った人を救命行動あり群 (あり群)、それ以外を救命行動なし群 (なし群) とした。主要評価項目:心肺蘇生の救助意欲 (もし見知らぬ人が目の前で倒れていたら自ら心肺蘇生を試みると思うか) とした。5段階の選択肢のうち、「思う」、「どちらかと言えば思う」を選択したものを救助意欲ありとした。倫理的配慮:回答は自由意志であり回答を行わないことで不利益がないことを口頭説明および掲示で周知した (倫理委員会承認番号:R0706)。

【結果】健康診断を受診した5933人のうち、2616人 (44.1%) から質問紙を回収し、人が倒れている現場に遭遇した156人 (救命行動あり群77人 (49.4%)) を解析対象とした。心肺蘇生の救助意欲の割合は、あり群47人 (61.0%)、なし群39人 (49.4%) で、2群間で有意な差はなかった (p=0.143) (図)。AED使用の救助意欲は、あり群53人 (68.8%) 、なし群50人 (63.3%) であった (p=0.465)。救命行動あり群における心肺蘇生の救助意欲ありの内訳は「思う」21人 (27.3%)、「どちらかと言えば思う」26人 (33.8%)であったが、AED使用の救助意欲ありの内訳は「思う」32人 (41.6%)、「どちらかと言えば思う」21人 (27.3%)であった。

【考察】人が倒れた現場に遭遇した人を対象にその後の救助意欲を調べたところ、救命行動実施の有無に関係なく救助意欲に違いはなかった。AED使用の救助意欲で「思う」を回答した人が多かったのは、胸骨圧迫よりAEDの方が手技の難易度が低いと感じたのかもしれない。今後、個人の性格、救助行動ごとのストレスレベルなど救助意欲に影響する要因をさらに明らかにする必要がある。なお本研究は京都大学救命救急講習Project TEAMメンバーにて実施した。
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