第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

プレホスピタルケア

[O2] 一般演題2

[O2-02] ドクターカー同乗看護師が持つストレス対処能力に関する調査

○永堀 望美1 (1. 済生会山口総合病院)

Keywords:ドクターカー同乗看護師、働きがい、ストレス対処能力

目的 
プレホスピタルで働く看護師はメンタルヘルスを維持しがたい様々な要因が明らかにされており、そのストレス度は高いとされている。A病院においてもドクターカー同乗看護師が抱える精神的ストレスの存在が明らかになった。今回、ドクターカー同乗看護師の働きがい構成要素・要因から活動に対する肯定的感情を明らかにし、個人が持つストレス対処能力との関連を調査する目的で研究を行った。
方法 質的実態調査研究
1.対象 A病院ドクターカー同乗看護師5名 
2.研究期間 令和 1年10月~令和 2年1月
3.データー収集内容・方法
①半構造的面接法②面接は1人約30分程度とする③面接内容の録音する④インタビューガイドを作成 
4.データー分析方法 
①逐語録作成②逐語録から類似した文脈をまとめサブカテゴリー分類する③サブカテゴリー内容からKJ法を用いてカテゴリー化④カテゴリー間の構成要素を構造化
倫理的配慮 
A病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得た。
結果 
全コード198個、サブカテゴリー17個、カテゴリー7個が分類された。

働きがいに関するカテゴリーは、①活動上の経験②心理的実感③職場環境の3つに分類された。《活動上の経験》は、〈自己評価〉〈他者評価〉〈困難な状況の改善〉〈質の高い看護技術の提供〉〈患者家族とのコミュニケーション〉の5つのサブカテゴリーに分類された。《心理的実感》は、〈自己達成感〉〈自己効力感〉〈自己成長感〉〈コントロール感〉〈自己存在感〉〈活動における環境整備〉の6つのサブカテゴリーに分類された。《職場環境》は、〈良好な人間関係〉の1つのサブカテゴリーに分類された。

ストレス対処能力に関するカテゴリーは、①信念②構え・考え方③役割認識④自己成長の4つに分類された。《信念》では、<救急看護が好き>〈誇りを持つ〉の5つのサブカテゴリーに分類された。《構え・考え方》では、〈割りきる〉〈限界を知る〉の4つのサブカテゴリーに分類された。〈役割認識〉では、〈患者の状態変化に貢献したい〉〈役割を果たしたい〉など4つのサブカテゴリーに分類され、《自己成長》では、〈もっと上を目指したい〉など5つのサブカテゴリーが分類された。

考察 
働きがいに関する《活動上の経験》のカテゴリーでは、提供した看護実践に対する<他者評価>が抽出されると推測したが、調査の結果看護実践に対する<自己評価>が多く抽出された。これらは、プレホスピタルでは患者家族との関りが近隣の病院への搬送までという短時間であることが関連すると考えた。これによりドクターカー同乗看護師は《活動上の経験》からの《心理的実感》が得にくい労働環境にあることが推察された。一方で、〈患者の状態変化に貢献したい〉〈役割を果たしたい〉といった活動に対する肯定的感情が明らかになった。これらは、<救急看護が好き>〈誇りを持つ〉といった《信念》を持ち、〈割りきる〉〈限界を知る〉といった《構え・考え方》の中で活動における自分の役割を認識していることが考えられた。役割認識をする中で自己成長への内省を繰り返し自ら〈自己効力感〉を得ていることが関連すると考えた。自己効力感は働きがいを感じる《心理的実感》の構成要素であり、A病院のドクターカー同乗看護師が持つストレス対処能力に《信念》《自己成長》《役割認識》《構え・考え方》の関連が示唆された。