第22回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

一般演題

プレホスピタルケア

[O2] 一般演題2

[O2-03] A病院ドクターカーナースにおける現場活動の現状と課題 ~現場活動調査から見えた役割~

○福士 博之1、比嘉 徹1、鈴木 晴敬1 (1. 中津川市民病院 病院前救急診療科)

Keywords:ドクターカーナース、現場活動、役割

【はじめに】A病院、病院前救急診療科ドクターカー(以下A病院ドクターカー)は、医師1名または、医師1名・看護師1~2名同乗の出場体制で、年間約500件、月平均40件(出場キャンセル含む)現場出場している。平成26年1月から本格運用し、令和元年12月までで現場出場件数は2300件であり、過去2年間での現場出場件数は675件、そのうち435件は看護師同乗の現場出動件数であった。病院前救急診療におけるドクターカーナースに関して、関連学会で報告されてきているが、ドクターカーナースの現場活動の現状や役割に関しての報告はまだ多くない。A病院では過去に「病院前救急診療に関わる看護師のストレス」や「現場看取りにおける看護師の役割」に関して報告してきた。先行研究で、救命センターや救急初療室での救急看護師の活動・役割については報告されているが、ドクターカーナースにおける現場活動の役割は明らかにされていない。【目的】A病院ドクターカーナースにおける現場活動の実態を調査し、ドクターカーナースの現場活動の役割を明らかにすることを目的とする。【倫理的配慮】A病院倫理審査委員会の承認(承認番号2020‐0062)を受け実施した。【方法】対象期間中の症例に関して、後ろ向き実態調査法を用いた。調査項目は、ドクターカーで現場活動中に実施した処置の酸素投与・12誘導心電図・除細動・人工呼吸・気管内挿管・末梢静脈路確保・骨髄針・中心静脈路確保・薬剤投与・胸腔ドレーン挿入・尿道留置カテーテル挿入・胃管挿入・血液ガス分析検査・超音波検査・血糖測定・乳酸測定・一酸化炭素測定・自動胸骨圧迫装置(以下LUCAS)の18項目の実施件数を、医師のみ出場群(以下D群)と医師・看護師出場群(以下D・N群)とし、χ2検定法で分析し、有意水準はP<0.05とした。【結果】対象期間の2年間で、総出場件数は675件、そのうちD群は240件(36%)、D・N群は435件(64%)であった。D群とD・N群の現場処置件数比較で、D群に有意に多かった処置は、骨髄針41件、LUCAS 52件であった。一方D・N群に有意に多かった処置は、末梢静脈路確保279件 、尿道留置カテーテル挿入12件、血液ガス分析検査213件、超音波検査110件、血糖測定257件、乳酸測定252件であった。【考察】D群とD・N群の処置件数比較で、D群で骨髄針、LUCASが有意に多かったことは、医師1名での出場では、人員的、物品準備の時間的な要因、簡便さから使用が多かったと推察できる。これは以前本学会で発表した、病院前看取りにおける処置件数比較でも、骨髄針に関しては同様の結果が得られている。D・N群で末梢静脈路確保が有意に多かった事は、ドクターカーナースの現場活動における役割の一つとして、末梢静脈路確保の重要性が明確になった。D・N群で、病院前救急診療に重要なPOCT(臨床現場即時検査)の各血液検査、超音波検査が有意に多かったことは、看護師がいることで検査実施件数が増え、診断の一助に影響を与えた結果と判断でき、A病院ドクターカーナースの現場活動における看護師の役割の一つを証明した結果と考える。しかし、本研究は全出場症例での実施件数比較であり、疾患別・要請形態別での実施件数比較ではないため、看護師の役割を証明するには限界がある。また処置件数のみに特化した調査であり、今後はドクターカーナースの役割として、現場での看護師の臨床推論・判断、家族・関係者との関わり等、処置件数では表せない役割も追及し研究していく必要がある。