第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

トリアージ

[O3] 一般演題3

[O3-03] A病院におけるトリアージの実際と課題

○河村 恵子1、俵積田 慶子1、山西 正巳1、萱野 恭代美1、福井 優1 (1. 社会医療法人清恵会 清恵会病院救急医療センター)

Keywords:トリアージ、オーバートリアージ、アンダートリアージ

【はじめに】
A病院では救急医療センターを受診する全患者にトリアージを実施しているが、JTASではなく独自の4段階評価を用い救急医療センター全看護師が行っている。その為、トリアージ実施者によって観察方法や判定結果等に差があるのではないかと考え、今回調査をすることでトリアージの実際を分析・問題点を見出し今後の課題が明らかとなったので報告する。

【目的】
 救急医療センター受診患者に対するトリアージ判定を分析し問題点を見出すことで今後の課題が明らかとなる

【方法】
期間:2019年4月1日~9月30日
対象:救急医療センター看護師32名
方法:患者のカルテから状態を把握し、トリアージ実施率・判定結果との比較 OT・UTについて原因と看護師の経験年数を分析 問題点・改善点を考察

【倫理的配慮】
A病院看護部において倫理審査の承認を得て、研究の趣旨を文章で提示し同意を得た。

【結果】
 2019年4月~9月までの救急医療センター受診総数は9947名、トリアージ対象者は9478名であった。トリアージ実施率は98%、最少は4月(96.4%)、最多は7月(98.3%)であり、OTは3%、UTは7%であった。 
経験年数3年以上からリーダー業務が開始となり、トリアージ実施者の経験年数は1.1~2年目2292件、2.3~5年目3405件、3.6~10年目1347件、4.11~20年目1403件、5.21年目以上793件であった。
経験年数別のOTは1.106件(5%)、2.100件(3%)、3.82件(6%)、4.11件(1%)、5.12件(2%)であり、UTは1.186件(8%)、2.213件(6%)、3.71件(5%)、4.115件(8%)、5.79件(10%)であった。
 OTの原因は、疼痛評価が欠落69件、慢性症状を過大評価29件、疼痛の強さを測定したが不適切評価28件、バイタルサインは正常だが症状や訴えのみで評価27件、病名による評価17件等であった。
 UTの原因は、疼痛評価が欠落108件、疼痛の強さを測定したが不適切評価57件、高齢者の発熱46件、創部の観察不足46件、SpO過小評価23件等であった。
今回、命に関わるOT・UTは無かった。

【考察】
 A病院のOT・UTの割合はOT=3%、UT=7%であり、各経験年数の結果と比較すると2.の割合とほぼ一致する。2.4ではOTは平均より少ないがUTにおいてはほぼ同率であったが5.ではUTが10%と高値であった。1.2が全トリアージの62%実施しており、勉強会はメンバー業務をおこなっている看護師が主に参加している。21年目以上ではメンバーの機会や勉強会への参加が少ない事から、トリアージ判定基準となる数値や観察内容の認識不足もありUTが高値になったのではないかと考える。
 OT・UTの原因では「疼痛の強さの評価」である「観察不足」と「不適切評価」が共通しており、UTにおける特徴では高齢者の発熱やSpO値の過小評価を認めトリアージ判定に重要な1次補足因子の認識が不足していると考えられる。また慢性症状や予め明らかとなっている病名により「現在の症状を評価し緊急度を決定する」際に過大評価となりやすくOTに繋がっている事が明らかとなった。
 トリアージを行う看護師になるには3年以上の救急領域の看護経験が望ましいと言われているが、A病院では救急医療センター全看護師で患者のトリアージを行っている。その為、精度の高いトリアージを実施する為に必要な共通の知識や指標について経験年数を問わず定期的に教育をおこなうことが必要であると考える。