第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

トリアージ

[O3] 一般演題3

[O3-04] トリアージにおける呼吸観察率の実態調査
~呼吸数測定率向上にむけて~

○押野 麻琴1、鈴木 由美1 (1. 公立長生病院)

Keywords:呼吸、トリアージ、救急外来

[目的]A病院は2次救急としての役割を担い、2013年より緊急度判定支援システム(JTAS)を用いたトリアージを行っている。

昨年の研究において、準緊急であるレベル3と判定した発熱患者のうち血圧、脈拍、SpO2の測定率は97%だったのに対して、呼吸測定率が45%と低かった。呼吸数は循環動態や呼吸状態の変化に伴う血圧低下やSpO2低下よりも早期に変化が現れる重要なバイタルサインである。呼吸数測定率向上を今後の課題の1つとしてあげた。呼吸測定率が向上することでより精度の高いトリアージを実施することができると考える。今回トリアージの際における呼吸観察の実態調査と分析を行なった。

[方法]①2020年2月1日から3月31日までの2ヶ月間、救急車で来院した患者154名を担当した看護師25名(常勤看護師16名 臨時看護師4名 パート看護師5名)の呼吸観察実態調査を行なった。②①の調査期間の開始前・終了後に担当した看護師に対して呼吸数を記録すること、全身性炎症反応症候群(SIRS)の診断基準やqSOFAなどについての意識調査をアンケート形式で行なった。

[倫理的配慮]A病院倫理委員会の承認を得た。

[結果]①体温・脈拍・血圧・SpO2の測定率は96~98%だったことに対して、呼吸数測定の必要性を理解していたのは86%、測定率は74%と低かった。

②アンケートの結果、JTAS全項目を毎回トリアージ記録に記載することを実施前64%、実施後60%の看護師が必要ないと考えていた。理由として、a軽症の外傷患者、b医師の診察が始まってしまった時、c症状に対して必要性の低い項目などの回答があった。呼吸様式と呼吸回数共に必要だと64%の看護師は思っているが実際には両方記載された患者は54%(83名)呼吸回数のみ20%(31名)呼吸様式のみ14%(21名)両方記載されなかった患者は12%(19名)であった。また意識レベルの確認はしていても記載できていないことが分かった。理由として意識清明で受け答えがしっかり出来ている場合は記載を省略していることが分かった。調査開始前はSIRSの診断基準を知っている看護師は40%、qSOFAは32%であったが、終了後はSIRSの診断基準を知っている看護師は60%、qSOFAは52%と改善した。しかし診断基準を用いた判断に活用できていない状態が判明した。

[考察]Scheinらによると、心停止した患者の84%は心停止前の8時間以内に症状の悪化や新たな訴えがあったとしており、急変した患者の半数以上が急変前に呼吸数24回/分以上を示していた。呼吸数は患者の重症度を評価する上で重要な指標の1つである。呼吸は意識的に変化させることが可能であり、意識的に変化させられない体温・脈拍・血圧・SpO2に比べて測定が難しいことからも他のバイタルサインの異常がなければ、呼吸数の測定は必要ないと判断してしまったのではないかと考えられた。呼吸数はSIRSの診断基準の4項目の1つであり、qSOFAの観察項目の1つでもある。重症化への移行を早期認知するためにも呼吸数の測定は重要であり、経験的判断だけでなく、根拠を持って総合的に判断できるような継続的教育が必要と思われた。