[O5-05] 経口気管挿管に対するカテーテル固定用パッチの有用性
Keywords:経口気管挿管、アンカーファスト、皮膚障害、口腔障害、口腔ケア
【はじめに】
経口気管挿管は固定による皮膚障害や口腔障害、口腔内の汚染が生じやすい。人工呼吸器を装着している場合では、人工呼吸器関連肺炎を合併する可能性があり、それらの予防は看護師の重要な役割である。経口気管挿管の固定方法には、テープまたは固定具を用いる方法がある。固定具の一つにアンカーファスト™という製品があり、それによる固定法は皮膚障害や口腔障害の合併を予防すると報告されているが、我が国での報告は少ない。またアンカーファスト™の合併症予防効果以外の有用性についての報告も少ない。
【目的】
本研究の目的は布テープ、アンカーファスト™での固定方法を比較し、アンカーファスト™の合併症予防効果やその他の有用性を明らかにすることであった。
【方法】
A大学病院救命救急センターにて24時間以上経口気管挿管を実施した入院患者を対象とした。布テープ固定群(以降TF群)とアンカーファスト™固定群(以降AF群)の皮膚障害発生率、口腔障害発生率、1日当たりの口腔ケア回数、OAGスコアを後方視的に調査・比較し、有意水準1.3%にて有意差判定を行った。
【倫理的配慮】
本研究はA大学医学倫理審査委員会の承認を得て実施し研究対象は個人が特定できないよう配慮した。
【結果】
対象はTF群35名、AF群43名であった。皮膚障害発生率はTF群42.8%(15名)、AF群7.0%(3名)であり、AF群が有意に低かった(p<0.001)。口腔障害発生率はTF群31.4%(11名)、AF群7.0%(3名)であり、AF群が有意に低かった(p=0.007)。1日あたりの口腔ケア回数はTF群平均値3.2回/日、AF群平均値4.1回/日であり、AF群が有意に多かった(p=0.002)。OAGスコアはTF群AF群ともに中央値12.8点であり、有意差は認めなかった(p=0.671)。
【考察】
口腔ケアは人工呼吸器関連肺炎の予防だけでなく、口腔内汚染や口臭の予防につながる。アンカーファスト™では、チューブストリップを使用し気管挿管チューブを左右にスライドすることで固定位置の変更が可能であり、口腔内の観察や口腔ケアは簡易になる。また布テープ固定ではテープの張替えやチューブ保持などにより、口腔ケアや観察の所要時間延長や人員確保が必要である。さらに布テープを張り替える際には、予定外抜管や気管挿管チューブ先端位置変動の可能性が生じるが、アンカーファスト™であれば、頻回な固定交換の必要性がないためそのリスクを抑制できる。したがって、口腔ケアや口腔観察の簡易化、計画外抜管・気管挿管チューブ先端位置変動の可能性低下、業務負担の軽減などの複数の要因により、口腔ケア回数が増加したものと考えられた。また布テープによる固定は、気管挿管チューブによる同一部位への圧迫が継続し、布テープ自体の粘着性・テープの張替えによる皮膚への外力が伴う。それに比べてアンカーファスト™であれば、適宜気管挿管チューブ位置の変更が可能であり、圧迫部位や圧迫時間の調整が可能であるため、同一部位への長時間の圧迫継続は避けられる。また頻回な間隔でのテープ張替えの必要性がなく、テープの粘着性やテープ張替え時に発生する外力を抑制できる。その結果皮膚障害や口腔障害発生率が減少したものと考える。
【結語】
アンカーファスト™を使用することは、人工呼吸器管理中における口腔ケア回数の増加につながる。また皮膚障害・口腔障害発生率は減少し先行研究を支持する結果となった。上記からアンカーファスト™での固定は、経口気管挿管患者において有用であると考える。
経口気管挿管は固定による皮膚障害や口腔障害、口腔内の汚染が生じやすい。人工呼吸器を装着している場合では、人工呼吸器関連肺炎を合併する可能性があり、それらの予防は看護師の重要な役割である。経口気管挿管の固定方法には、テープまたは固定具を用いる方法がある。固定具の一つにアンカーファスト™という製品があり、それによる固定法は皮膚障害や口腔障害の合併を予防すると報告されているが、我が国での報告は少ない。またアンカーファスト™の合併症予防効果以外の有用性についての報告も少ない。
【目的】
本研究の目的は布テープ、アンカーファスト™での固定方法を比較し、アンカーファスト™の合併症予防効果やその他の有用性を明らかにすることであった。
【方法】
A大学病院救命救急センターにて24時間以上経口気管挿管を実施した入院患者を対象とした。布テープ固定群(以降TF群)とアンカーファスト™固定群(以降AF群)の皮膚障害発生率、口腔障害発生率、1日当たりの口腔ケア回数、OAGスコアを後方視的に調査・比較し、有意水準1.3%にて有意差判定を行った。
【倫理的配慮】
本研究はA大学医学倫理審査委員会の承認を得て実施し研究対象は個人が特定できないよう配慮した。
【結果】
対象はTF群35名、AF群43名であった。皮膚障害発生率はTF群42.8%(15名)、AF群7.0%(3名)であり、AF群が有意に低かった(p<0.001)。口腔障害発生率はTF群31.4%(11名)、AF群7.0%(3名)であり、AF群が有意に低かった(p=0.007)。1日あたりの口腔ケア回数はTF群平均値3.2回/日、AF群平均値4.1回/日であり、AF群が有意に多かった(p=0.002)。OAGスコアはTF群AF群ともに中央値12.8点であり、有意差は認めなかった(p=0.671)。
【考察】
口腔ケアは人工呼吸器関連肺炎の予防だけでなく、口腔内汚染や口臭の予防につながる。アンカーファスト™では、チューブストリップを使用し気管挿管チューブを左右にスライドすることで固定位置の変更が可能であり、口腔内の観察や口腔ケアは簡易になる。また布テープ固定ではテープの張替えやチューブ保持などにより、口腔ケアや観察の所要時間延長や人員確保が必要である。さらに布テープを張り替える際には、予定外抜管や気管挿管チューブ先端位置変動の可能性が生じるが、アンカーファスト™であれば、頻回な固定交換の必要性がないためそのリスクを抑制できる。したがって、口腔ケアや口腔観察の簡易化、計画外抜管・気管挿管チューブ先端位置変動の可能性低下、業務負担の軽減などの複数の要因により、口腔ケア回数が増加したものと考えられた。また布テープによる固定は、気管挿管チューブによる同一部位への圧迫が継続し、布テープ自体の粘着性・テープの張替えによる皮膚への外力が伴う。それに比べてアンカーファスト™であれば、適宜気管挿管チューブ位置の変更が可能であり、圧迫部位や圧迫時間の調整が可能であるため、同一部位への長時間の圧迫継続は避けられる。また頻回な間隔でのテープ張替えの必要性がなく、テープの粘着性やテープ張替え時に発生する外力を抑制できる。その結果皮膚障害や口腔障害発生率が減少したものと考える。
【結語】
アンカーファスト™を使用することは、人工呼吸器管理中における口腔ケア回数の増加につながる。また皮膚障害・口腔障害発生率は減少し先行研究を支持する結果となった。上記からアンカーファスト™での固定は、経口気管挿管患者において有用であると考える。