第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

重症患者看護

[O5] 一般演題5

[O5-09] A病院高度救命救急センターにおける褥瘡・MDRPU予防ケアへの看護師の意識と今後の課題

○吉丸 佳成1、緒方 優1、今泉 香織1 (1. 佐賀大学医学部附属病院高度救命救急センター)

キーワード:褥瘡、MDRPU、意識調査

【研究背景】
 褥瘡の発生には、病的骨突出、栄養状態の低下、浮腫、多汗・失禁などの「個体要因」と、体位変換、スキンケア、栄養補給、リハビリテーションなどの「環境・ケア要因」があり、医療関連機器圧迫創傷(以下、MDRPU)は、さらに「機器要因」が重なり、これらが関連し、褥瘡やMDRPUの発生に繋がる。A病院高度救命救急センター(以下、ECU)には、外傷や脳卒中、心疾患など様々な診療科の患者が入院しており、全例緊急入院である。全身状態が変化しやすい患者が多く、「個体要因」「機器要因」が多くあてはまり、早い段階からの予防ケアが重要である。予防ケアを実施するためには、看護師の意識と関心は「環境・ケア要因」に影響し、褥瘡やMDRPU発生要因の一つとして重要であると考え、予防的スキンケアについての学習会や日々の実践でのケア指導などを行った。
 そこで今回、看護師の予防ケアに対する意識調査を行ったので報告する。
【目的】
ECUに勤務する看護師の褥瘡やMDRPU予防ケアに関する意識と関心を明らかにする。また、得られた結果より、今後の褥瘡やMDRPU予防対策や看護ケア、教育に繋げる。
【方法】
調査対象:ECUの看護師36名
調査方法:独自で作成した無記名の自記式質問紙調査。
調査項目:看護師経験年数、他部署経験の有無、ECUでの役割、予防ケアの重要性・関心について、予防ケアに対する知識・考え15項目、予防ケア実施状況22項目。分析にはIBM SPSS ver22.を使用し統計を行った。
倫理的配慮:A病院の倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 32名から回答を得た。予防ケアに関して【重要】と回答した看護師は100%、【関心】がある看護師は96.9%であった。理由について「褥瘡は看護師の責任」「褥瘡リスクが高い患者が多く予防ケアは重要」との回答があった一方で、「迷うことが多い」「関心はあるが難しい」など苦手意識の回答も認めた。また、予防ケアについての理解度は【ポジショニング】93.8%【失禁ケア】84.4%【予防的スキンケア】68.6%【被覆材】65.6%【外用薬】65.6%で、経験年数や他部署経験の有無による有意差はなかった。
 予防ケア実施状況は、【皮膚の観察】100%、【2時間毎の体位変換】93.8%と出来ていた。しかし、【皮膚状態アセスメント】【ケア変更】の実施率は93%と低下し、【栄養】への介入は59%とより低下した。さらに、予防ケアを実施する【環境】であると答えた看護師は75%、【タイムリー】にしていると答えた看護師は59%であり、「手を差し込み除圧するなどできることから行う」「褥瘡対策係へ相談後の対応となっている」「実際は後回しになりがち」などの回答があった。
【考察】
 予防ケアに対する看護師の意識や関心は高まっており、知識獲得や皮膚の観察、体位変換などは出来ている。これは、今までに学習会の機会を設け、知識を提供した結果であると考える。しかし、患者の病棟滞在日数が5.0日と短く入退室が多いことにより、ケア後の一連の皮膚の変化を見られず、栄養状態への介入を含めた全身的な予防ケアや皮膚状態のアセスメント・ケア評価・ケア変更という継続的な予防ケアが行えていない現状にあると考える。
 ECUには状態変化しやすい急性期の患者が入室し、使用する医療関連機器も様々であり、全身状態に応じた予防ケアが必要である。今後は、病棟滞在中の患者の症例検討に取り組み、皮膚状態のアセスメント・予防ケア計画の検討をカンファレンス内で行うことで、実践能力向上に繋げていく必要があると考える。