第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

重症患者看護

[O5] 一般演題5

[O5-11] 敗血症患者に対するノルアドレナリン投与とMDRPU発生の関連性

○赤塚 真友1、武田 成美1、岩下 幸佑1、阪口 理恵1、下池田 百合1 (1. 大阪急性期・総合医療センター 高度救命救急センター)

キーワード:敗血症、ノルアドレナリン、医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)、高度救命救急センター、予防ケア

[目的]
近年、医療の高度化により医療機器の使用頻度は増加している。それに伴い、医療関連機器圧迫創傷(以下MDRPUとする)の発生件数も上昇している。救急領域では循環不全、浮腫など褥瘡ハイリスクに該当する患者が多いことに加え、治療に関連した医療機器の使用によりMDRPUを生じる割合が高いと言われている。当院高度救命救急センター(以下Aセンターとする)においても、2019年度に75件のMDRPU発生が認められ、敗血症に伴う循環障害によりノルアドレナリン(noradrenaline:以下NAdとする)を投与していた患者に発生頻度が多い傾向である。NAd投与に伴う末梢循環不全がスキントラブルを起こしやすいと言われているが、具体的な発生頻度や発生に関与した医療機器、NAdとの関連性については示されていない。そこで、NAd投与とMDRPU発生の関連性、発生に関与した医療機器について明らかにする。
[方法]
2019年1月から2020年3月にAセンターに入院した敗血症患者328名を対象に、NAd投与、MDRPU発生の有無、発生に関与した医療機器についてカルテからデータを収集した。A群(NAd投与、MDRPU発生)、B群(NAd非投与、MDRPU発生)、C群(NAd投与、MDRPU未発生)、D群(NAd非投与、MDRPU未発生)の4群に分けX検定にかけた。
[倫理的配慮]
院内の倫理審査委員会の承認を得た。
[結果]
敗血症患者328名のうち、NAdを投与した患者は137名、MDRPUが発生した患者は38名であった。これをA群30名、B群8名、C群107名、D群183名の4群に分けX検定にかけた結果、 NAd投与群と非投与群でMDRPU発生に優位差が認められた。また、MDRPU発生に関与した医療機器は、気管内チューブ9件、尿道留置カテーテル6件、経鼻胃チューブ5件、医療用弾性ストッキング4件であった。
[考察]
NAdは末梢血管、細胞収縮作用があり、皮膚や粘膜血管収縮、筋、内臓血管収縮作用による臓器還流の低下に伴って皮膚障害が発生しやすいと言われている。検定結果で優位差が認められたことから、NAd投与に伴う末梢循環不全がMDRPU発生に関連していることが示唆された。 日本褥瘡学会は、MDRPU発生に関連する要因に循環不全を挙げており、NAdの作用と今回の結果から、NAd投与がMDRPU発生に関連する同様の要因であると考えられる。NAdを投与していない患者にもMDRPUが発生した点については、浮腫や低栄養などNAd投与以外のハイリスク要因があったと考えられる。また、 日本褥瘡学会が一般病院に対して実施した調査では、ギプス・シーネや医療用弾性ストッキングが関与したMDRPUが多い傾向にあったが、Aセンターでは気管内チューブでのMDRPU発生が多かった。これは、気管内挿管の実施率が高いことや管理が長期に及ぶことなど防ぎえない理由もあるが、挿管チューブの固定方法や日々の観察が不十分であることも原因であると考える。
近年MDRPUに関する研究や文献は増えており、Aセンターでもスキンケア委員会が中心となって注意喚起を行なっているが、MDRPUの発生報告は増えている。今回の研究を踏まえ、NAdとMDRPU発生の関連性について周知するとともに、具体的な予防ケアの導入、導入前後の結果の比較から新たな原因検索、対策検討等の取り組みを行っていきたい。